MSX3メモ ~マラソン・トレラン・登山のあれこれ~

自称スピードハイカーが登山やマラソンのことをメモするブログ。マンガゲームウイスキーについても語る!

2021年5月14日・15日 日本三大急登の黒戸尾根から残雪の南アルプス・甲斐駒ヶ岳へ 長く辛い登りに苦しむも久しぶりのテント泊登山は楽しかった

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南アルプス・甲斐駒ヶ岳へ登ってきました。「日本三大急登」で知られる黒戸尾根から、テント担いで一泊二日。長くて重くて辛い登りでしたが、それだけに登頂の喜びはひとしおでした。

今回、黒戸尾根から甲斐駒を登るに至った経緯と、残雪期の登山の状況、久しぶりのテント泊の様子などをご紹介します。 

テントのテストも兼ねて、一泊山行を計画

テント買ったので、久しぶりのテント泊で行くつもりで休みは1か月前から決まっていましたが、どこの山に登るかをなかなか決められずにいました。

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テント装備背負っての登山なんて15年ぶりだし、まだ高山は雪があるので難易度的にも心配でした。北アルプスだと燕か蝶くらいしか思いつかず、それならせっかくなんで南アルプスまで足を延ばして鳳凰三山あたりに登っとくか、と直前まで考えていました。

鳳凰三山のルートを調べている中で、すぐ隣にある甲斐駒ヶ岳が目に入りました。甲斐駒は昔北沢峠にテント張って、仙丈ケ岳といっしょに登ったことがあります。北沢峠までは伊那からバスが出てるし、甲斐駒・仙丈と百名山ふたつ一気に登れて効率もいいし、テント場の標高も低そうだからこれはいいかも!と思い、北沢峠方面のバスを調べてみると、一昨年の台風による被害で林道が通行止めになっていて、運休していることが発覚。(実際には北沢峠から6キロほど手前の歌宿というところまでは運行)

それで北沢峠経由の甲斐駒は諦めたんですが、鳳凰三山と甲斐駒を比べちゃうとどうしても甲斐駒の方に目が行っちゃいます。ここらあたりで、「黒戸尾根から甲斐駒」というルートが選択肢に入ってきたと思います。

黒戸尾根なんて行くつもり全く無かった

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黒戸尾根のことは「とにかくキツそう」程度の認識でしたが、ちょっと調べてみると、「日本三大急登」で「標高差2200m」に「垂直の梯子」何だこりゃ。こんなツラそうな登山道テント背負って登るのなんて絶対嫌だね!鳳凰三山登ろう、と最初は思っていたんですが、だんだんとチャレンジしてみたい気持ちが高まっていきました。7月の富士登山競走のいいトレーニングになるし、楽な方とキツい方で悩んだらキツい方を選べ!という自分の中の謎の漢の声にも突き動かされまして、翌日には黒戸尾根から甲斐駒に登ることに決めていました。

黒戸尾根から登ることに決めたものの、不安要素はたくさんありました。

まずは標高差。黒戸尾根から甲斐駒ヶ岳を目指すルートは、登山口が山梨県小淵沢市の尾白渓谷で、ここが標高770m。甲斐駒ヶ岳の標高は2980mなので、標高差は実に2200mにもなります。しかも黒戸尾根は五合目付近で一旦降って登り返しがあるので、累積標高差にすると2600m以上にもなります。これは国内トップクラスの標高差です。

そして、この標高差をテント装備で登り、登頂後のハレバレとした気持ちでテント生活をエンジョイするため、できれば当日のうちに山頂に立ちたい!という計画でした。これは登山口を6時にスタートしたとしても、標準コースタイムの70%で歩かなければいけない計算になり、重装備でそこまで早く登れるかという心配をしていました。 とりあえず、11時までに7合目の小屋到着を目標にして、遅れるor超疲れているようであれば山頂アタックは翌日にすることにしましょう。

また、雪山初心者の僕が、5月中旬の残雪期の3000m峰に果たして登れるのか?という不安もありました。ちょっと前のGWには寒気の入り込みによる天候悪化で何人も死んでるし、高山は荒れれば冬山ですからね。山はなめちゃいかんのです。

【拡散希望】重大事故が発生しました

ただ残雪については、ヤマレコや小屋のHPなんか見るとかなり少ない状況で、難所の岩場にも雪は無いということだったので、多分大丈夫だろうと予想しました。

色々な心配事はあるものの、楽しみ半分緊張半分で当日を迎えました。

ルート・コースタイムなど

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6時20分スタート⇒七条小屋10時45分(テント設営40分くらい)⇒頂上13時50分でした。テント設営除けばほぼ休憩無しで山頂まで約7時間。コースタイムの70%を目標に、小屋までは荷物の重さに苦労しながらも大体予定通りのペースでしたが、荷物が一気に軽くなる小屋から上は残雪で思ったほどペースを上げられず辛かった。

コース状況・危険個所など

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  • 序盤~5合目までの樹林はよく整備されて歩きやすい。
  • 5合目~小屋までに多数の梯子・鎖場。高度感あるがしっかり整備されている。
  • 七丈小屋より下にはほとんど雪無しでアイゼン不要。
  • 小屋から八合目まで残雪豊富で踏み抜きもあり苦労しました。
  • 八合目から頂上はミックス。

雪が出てくるテント場より上については、チェーンスパイクでも行けないことないけど12本爪アイゼンの方がストレスが無い状況でした。難所の頂上直下ルンゼ状の岩場には雪無しでしたが、アイゼン付けての通過になるので引っ掛けに注意が必要な状況。

残雪期ということもあり、雪は日々消えていっていますが、その分シャーベット状で滑りやすい状況なのでそれなりの注意が必要です。

小屋とテン場の間の道にも残雪があり、トイレに行く際なんかには面倒でした。

当日の様子

前置きが非常に長くなりましたが、当日の様子を写真で振り返ります。この日は全国的に気温が高くなる予報で、6時の時点でもかなり暖かかった。

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4時半安曇野の自宅を出発、高速で小淵沢まで。登山口は尾白渓谷ですが、手前のキャンプ場が出発点だと思い込み、10分ほどロス。6時20分駐車場出発。いよいよ標高差2200mの登山のスタート。テント装備が肩に食い込む。

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序盤は、予想外に歩きやすい登山道。石や木の根も少なくて、ふかふかの落ち葉の登山道でとてもいい道。それなりに斜度はありますが、ずっとキツイ登りではなく、時々斜度が緩むのであまり苦労はしなかった。

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ここはいい道の代表格。こんな風に足を休められる場所もあって、全体としては急登ではあるもののいいペースで登れます。

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最初のチェックポイント笹の平分岐まではCT2時間20分のところ1時間20分ほどで到着。まだ標高は1500mです。上高地にも到達していない・・・。前半は上がらない標高のことをずっと考えながら歩いていました。

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2時間半ほどで刃渡りに到達。最初の難所っぽい場所。両側切れ落ちていますが鎖もしっかりしているのでそれほど恐ろしくはないです。でも刃渡りって名前がカッコイイですね。恐怖感あります。

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刃渡りを超えると梯子が出てきます。人口の滑りにくいステップを使った非常にしっかりした梯子です。

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黒戸山の巻き道に残雪がありました。一部氷化していましたがアイゼンが必要なほどではありませんでした。

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歩き始めて3時間半、ついに五合目の小屋跡に到達。ここは標高2100mほどで、スタートから標高差1300mを登ってきているのでちょっと疲れていました。ここからが前半の核心部になります。

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五合目から見える甲斐駒(奥)の手前にあるあの山を越えていきます。ここからが黒戸尾根の本領発揮です。

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急峻な崖に無理やりつけられた登山道を、梯子や鎖を頼りに登ります。

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下を見ると結構高度感あって怖いですが、ルートはしっかりしていますので安全を確保しながら登りましょう。

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一山超えてきましたが、次はまたあの山を越えていきます。黒戸尾根半端ねえな。

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壊れた橋の上にできた立派な橋を渡って斜面に取り付きます。

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その後も急な梯子鎖の連続ですが、この写真の垂直な梯子を登り、その先の高度感のある垂直の岩場を鎖だよりに登ると、核心部は終了となります。五合目以降は難所続きではありましたが、注意していれば大丈夫です。

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1時間ほどの核心部を抜けると、標高2370mの七丈小屋に到着。時間は10時45分、出発してから4時間半ほどで到着できました。辛かったけど何とか予定通り11時前には到着したので、本日中に山頂まで行くことに決定。

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小屋で受付して、テント場でテント設営しました。テン場は小屋から5分ほど登った所にあります。この時点で先客1名でした。一人は寂しいと思っていたのでよかった。

テントを設営して、不要な荷物はテントの中に置いて山頂アタック開始です。荷物が超軽くなって羽が生えたようです。

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ここは一段登った所にある第2テン場。この辺から雪が出てきます。

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八合目に向かう北西の斜面が一番残雪豊富でした。そして気温が高いのでシャーベット状になっていて滑るし踏み抜きます。足元はチェーンスパイク装備で、キックステップで何とか登れますが結構なストレスで、この斜面をクリアするのが本日一番体力を消耗しました。

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1時間ほどで苦労して八合目に到着。ここで山頂方面の展望が開けました。ここはご来光を見るスポットらしく、僕も登頂翌日もう一度ご来光を見にここまで登ろうかな?なんて最初は思っていましたが、あまりのツラさに明日は絶対に来ないことを決意。

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八合目から9合目にかけての道が本日二度目の核心部となります。まず雪のついたナイフリッジを渡り、上の写真の中央部にある岩場を慎重に登っていきます。斜面のトラバースが何か所かあり、残雪が緩んで踏み抜きやすく、慎重な行動が求められます。それほど怖くはありませんでしたが、緊張感ありました。

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ここは雪が付いていると危険なルンゼ状の岩場。ご覧の通りもう雪が無いので、難易度は高くありません。が、アイゼン付けて通過する際には引っ掛けに注意です。

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雪さえなければどうってことない岩場です。

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岩場を超えると、黒戸尾根名物の2本剣の刺さった大岩に到着。

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これこれ、これを見に来たんだよ。超カッコイイ。富士山が見えればベストだったんですが。

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いやー、見れて良かった。満足しました。

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ここまで来れば残りわずかです。岩と雪のミックス斜面を黙々と登ります。

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山頂らしきものが見えてきました。偽ピークではありませんように・・・。

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山頂手前に、雪に埋もれた駒ヶ岳神社本宮。剣がカッコイイ。そして・・・

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登り始めて7時間半、午後1時50分に甲斐駒ヶ岳に登頂しました!標高差2200mを登り切りました!!いやー、すげえ疲れました。

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隣のテントの方に撮っていただきました。山頂はいい天気で風も無く穏やかでした。

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北岳が大きい。今年は白根三山縦走もしたい。

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北沢峠を挟んで仙丈ケ岳。あちらは雪が多いですね。

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鋸岳方面への縦走路。

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南アルプスで一番難易度が高いと言われる鋸岳。一生行かないと思う。

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北沢峠までバスが来ていれば、今回黒戸尾根から登ることは無かったと思います。苦労しましたが、黒戸尾根をクリアできてよかった。

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八ヶ岳も良く見えました。すそ野が広い。

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頂上には20分ほど滞在して、その後テントまで下山しました。下山は12本爪アイゼン装着しました。下山もテント場上の斜面の通過に苦労しました。

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本日の我が家(右端)まで帰ってきた。そして青テントが3組とは珍しい。

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テントの中に置いておいたビールは生ぬるくなっていたので、急速冷却します。

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準備を整え、下山後に飲んだ最初の一杯は震える美味さでした。これは間違い無く2021ベストビール決定。無事登頂できた後だったし、明日は下山するだけだし、最高にうまかった!

この後テント場の他の方と酒飲みながら山の話で盛り上がったりして、楽しい夜でした。ビール850mlでは足りなくて小屋で追加しましたが、この時期はビールとサワー1本ずつしか販売してくれないので注意です。

夜8時頃就寝。朝方は寒かったけど、疲れていたので良く眠れました。

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翌5月15日(土)。朝は雲海でした。

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鳳凰三山が雲海に浮かぶ鳳凰三山が美しい。

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5時半頃起きて、朝食にラーメン食べて、撤収して7時ちょいすぎに下山開始しました。

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下山途中から小雨が降り出しました。涼しくてよかった。

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五合目に着く頃には完全にガスの中。核心部の下りはおっかなかったけど何とかなりました。この辺から登ってくる人と3組くらいすれ違いましたが、土曜日だっていうのに登りの人が少ない。

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下りもなかなか標高が下がらない。長い長い登山道でした。

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3時間半ほどで無事下山しました。

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お疲れ様でした。おかげさまで無事帰れました。神仏に感謝。

テント泊の感想

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七丈小屋テン場の標高は2400mほどで気温も高く、雨も降らなかったので快適に過ごせました。久しぶりのテント泊としては理想的な環境だったと思います。

テン場は砂付きでフラット、ちょっとトイレが遠いのが難点ですが快適でした。

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一人居酒屋を満喫するつもりが、他の登山者の方と飲み会的になってしまいましたが、とても楽しかった。このカスケードワイルドのフォールディングテーブルはこの日初使用でしたが、下山時にどこかに落としてきてしまいました。残念。

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VL-26T、とても快適でした。悩んで前日にAmazonで買ったクライミットのエアーマットも良かった。

テント泊で荷物は間違い無く重かったんですが、総合的には満足感もあって楽しいキャンプができました。

服装・装備など

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ザックはグレゴリーのミウォック34を使用しました。2015年に購入して以来、テント装備をパッキングしたのは初めてになります。

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ザックの重さ14キロほど。いつもは5キロ程度だと思うので相当重かった。それほど軽量化にこだわったわけでは無いですが、最近の道具は軽くなっているので、一昔前に比べるとかなり軽いはず。僕の快適テント装備ではこれがミニマム重量だと思います。

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持って行った荷物はこんな感じ。嵩張って困ったのはアイゼンと食料。ザックが37リットルなんでパッキングに非常に苦労しました。特に撤収時は納めるのが大変でした。やっぱり冬場は防寒やアイゼンで荷物が増えるので、もう少し大きいザックにしないとだめか。大きい方が撤収の際ポンポン入れられて楽だと思いました。

今回ザックが小さかったこともあり、インナーバックを抜いたフォーカスLを使いました。カメラ、スマホ、500mlペットボトル、行動食、モバイルバッテリーなどなんでも入れられて大変便利でした。カメラ程度しか入れないならスイングMでいいけど、今回のように距離が長いと大きめフロントポケットは非常に有効でした。

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まとめ

  • 出発時刻/高度: 06:19 / 787m
  • 到着時刻/高度: 10:48 / 789m
  • 合計時間: 28時間28分
  • 合計距離: 20.63km
  • 最高点の標高: 2924m
  • 最低点の標高: 765m
  • 累積標高(上り): 2654m
  • 累積標高(下り): 2666m

残雪の甲斐駒、難所続きの急登黒戸尾根、久しぶりのテント泊。盛りだくさんで緊張もしたけど、長くて険しい登山道を経ての登頂はものすごく達成感がありました。

日本三大急登の黒戸尾根は噂に違わぬハードなコースで、重荷での長く険しい登りには苦労しましたが、なんとか予定通りに初日に山頂まで行けました。

山頂付近の残雪状況については、七合目から八合目の斜面にはベッタリと残雪があり、しかも高温でシャーベットになっていて非常に登りづらかったです。八合目から上も所々雪が残りますが、数か所「ちょっと危険かも」というトラバースがありますが、基本的な雪上歩行技術があればまず問題は無い感じ(個人の感想です)。雪が付いていると危険と言われるルンゼについても全く雪が無く、難しくはありませんでした。

黒戸尾根全体の難易度としては、北アルプスで言えば上高地から前穂高岳・吊尾根経由奥穂高岳に登る重太郎新道と同程度と思いました。また七丈小屋のHPで毎日状況をアップしてくれているの本当に助かりました。

標高差2200mの黒戸尾根もクリアしたし、相当脚も鍛わったと思います。今年は早くも4回山に登りました。6月中もう一度テントやる予定です。その間に日帰りも1~2回やって、7月の富士登山競走に備えます。