MSX3メモ ~マラソン・トレラン・登山のあれこれ~

アルコールを中和するために走るおっさんが登山やマラソンのことをメモするブログ。マンガゲームウイスキーについても語る!

2020年10月3日 紅葉ピークの涸沢と奥穂高岳を日帰り登山して、滑落現場を目撃した

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日本一と名高い涸沢の紅葉を見に行ってきました。秋の涸沢、それも紅葉シーズンに行くのは初めてです。

もともとこの日は日帰りでどこかに登ろうとは思っていて、上高地から西穂高岳ピストン考えていたんですが、たまたま休みと紅葉ピーク情報が重なり、「今年の涸沢の紅葉は10年に一度!」とかって現地情報に煽られて、「そんなら一度見てみよう!」と。

事前に調べると涸沢の紅葉ピーク時はとにかく混雑が激しいらしく、通常時であれば山小屋も布団1枚に3人とかってレベルらしいですが、今年はコロナで人でも少ないだろうし、ちょうどいいかと行くことに決めました。どれくらい綺麗なのかワクワク。 

ルート・コースタイム

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今回は上高地から入って屏風パノラマコースから涸沢へ出て、そこからザイテングラード経由奥穂高岳に登り、吊尾根越えて前穂高岳往復して岳沢を上高地に下山、という計画でした。3年前にやった穂高連峰縦走の逆回りですね。

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横尾経由より屏風パノラマコースの方がコースタイムは長いんですが、いいかげん上高地から横尾までの平坦路は歩き飽きてうんざりなんで、多少ハードでもパノラマコースを選びました。

結果的には10時間弱かかりましたが、無事日帰りで最終バスまでに帰って来れました。

アクセス

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紅葉シーズンの10月現在、土日のシャトルバス始発は5時(平日6時)ですが、タクシーは4時半くらいから出てるみたいです。

10/3(土)は紅葉ピークでマイカー登山口となるさわんど駐車場は大混雑。ツイッター情報では朝5時でバスターミナル横第2・第3駐車場は満車でした。バスターミナル横づけの駐車場を目指してくる観光客が大多数の為、その他の第1駐車場(さわんど大橋)などは余裕ありでした。ちなみにタクシーも4時半始発は予約で満車だったみたい。

シャトルバスは5時と同時に運行始めて、乗客が一杯になると随時発車していました。帰り上高地からの終バスは16時15分と例年より早めです。料金は往復2300円、駐車場は1日700円自動精算です。

当日の様子

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それではこれより当日の様子です。

5時45分くらいのバスで上高地入りし、登山スタートが6時20分頃。この時間帯でもすでに上高地河童橋周辺には登山者がいっぱいでした。大きなザックを背負ったテント泊の登山者が多いです。僕は日帰りスピードハイクの軽量装備なので、ここから平坦路は走りますよ。

今回、いいかげん歩き飽きた横尾まで平坦路を何とかしたいと思い、初めて屏風パノラマコースから涸沢へ向かうことにしました。まずはその入り口となる徳沢の向こう新村橋まで走りましょう。

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平坦路は普通に走れるんですが、何しろ登山者が超多くて、抜いていくのがとても大変でした。みんな少しでも早く涸沢に着いていいテント場を確保したいらしく一生懸命早足で歩いていますが、こちらは軽量スピード属性タイプなんで速度が違います。なるべくプレッシャーを掛けないように、ゆるやかに抜いて走っていきます。ちなみにこの時点でトレランっぽい人も2~3組はいました。

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徳沢7時10分通過。草地のテント場も結構混んでいましたが、登りの人はもう出発しているでしょうね。

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徳沢から数分走ったら新村橋到着。この橋を対岸に渡って、しばらくは川沿いの工事道路を歩きます。橋を渡ると、ここまでの混雑が嘘のように誰もいなくなります。

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ここから登山道に入ります。看板には「奥又白池登山口」と書いてありますが、涸沢とは書いてありません。

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登山口からしばらくは沢沿いのゆるやかな道ですが、すぐに急斜面の登山道に変わり、山の奥へ奥へと入っていく道になります。上の写真のようなアルプスの稜線が見えてくると、傾斜は更に強まりなかなかにキツイ登山道です。

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目指すのは屏風岩の裏側、前穂高岳から連なる稜線の一部「屏風のコル」ですが、コルまではかなりの急斜面。斜面の弱点を突きながら一気に高度を上げていく登山道です。ちょいちょい下ってくる人とすれ違いますが、登りは誰もいません。多分キツイからですね。

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ヒイヒイ言いながら何とか稜線らしきところに出ました。右へ行くと屏風岩の山頂方面(屏風の頭)です。

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そしてこの景色。屏風パノラマコースでしか見られない紅葉越しの涸沢。これを見るために苦労して登ってきたんです。

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槍ヶ岳もキレイ。写真だとあんまりですが、実際に見ると物凄く綺麗で迫力があった。今日一番の景色がこれでした。

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この辺が一番紅葉が切れだった気がします。涸沢よりちょっと標高は高いかな?パノラマコースきついですが、コルから見える槍ヶ岳・穂高連峰のパノラマはまさに絶景で、苦労して登ってきたかいがありました。横尾からの方が早いですが、たまにはパノラマも悪くないかも。きついけど。

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さて、景観を楽しんだら涸沢に向かいますが、ここから涸沢までは斜面を横切るような登山道が涸沢まで続きます。この途中に何か所か沢をトラバースするような箇所があります。それほど危険度は高くありませんが、非常に事故が多い道です。

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今回、コルから最初のロープが張ってある斜面で、滑落を目撃してしまいました

上の木の向こう側が涸れ沢になっていて、そこから50mくらい登山者が滑落しました。

僕はコル側から歩いてきて、現場の20~30m手前で何かがゴロゴロ落ちている大きな音を聞き、その方向を見たら人らしきものが斜面を転げ落ちていくのが見えました。すぐに現場まで行くと、落ちた人の連れの方が歩いてきました。その方は滑落した瞬間を見ていなかったので状況を伝えました。

斜面の下を見ると、落ちた人が動いているのがわかりましたが、ケガの状況などは遠すぎてよくわかりません。すぐに110番と思いましたが電話が繋がらなかったので、連れの方に「多分屏風のコルまで行けば電話がつながるので、通報してください。」と伝え、僕は涸沢まで救助を呼びに行くことにしました。

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急いで涸沢に向かいましたが、この途中にも何か所かロープが張ってある箇所があり気が抜けません。それでも15年前に来た時よりはかなりいい道になっていたと思います。ストックもしまわず、大慌てで涸沢を目指します。電波は、相変わらず掴めません。

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だんだんヒュッテが近づいてきました。山小屋近づけば電波も入るかと思いましたが全然入らず。そして連れの方が通報していたらすぐにヘリが飛んでくるだろうと思っていましたが、その気配もありません。山小屋方面から救助隊っぽい人が急いでくる様子もありません。

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涸沢ヒュッテに飛び込み、「滑落がありましたが、連絡きてますか?」と慌てて聞きました。が、「来ていない」とのこと。状況を説明して、警察に連絡してもらいます。

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その後、涸沢の山岳警備隊の詰め所で詳しい説明をしました。15分ほどして、装備を整えた山岳警備隊の隊員2名が救助に向かいました。

結果的には、滑落した方は骨折で済んだようでした。命は助かって本当に良かった。滑落目撃~通報に関しては、ちょっと思うところあったので後述します。

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さて、滑落騒動もあってちょっとドタバタした結果、この時点で10時ちょいすぎ。予定より少し遅れていますが、この後どうしようかと少し悩みました。事故を見た後なので気分はすぐれません。そして天気も曇り空です・・・。

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悩んでいる時に猛烈な風と冷気とともに、稜線からガスの塊が降りてきたり。帰れってこと?でも、せっかくここまで登ってきたし、予定通り奥穂も登っていこうと決めました。

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天気は下り坂っぽくて風も冷たい。紅葉も綺麗なんですが事故直後で気分がダウナーなせいか、そこまで期待したほど美しくはないなあ。

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晴れていれば、また違ったかもしれませんね。でも紅葉ピークっていうけど多分8割くらいですね。この2~3日後がピークじゃないかな。

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ナナカマドの赤もややすすけていて、写真で見るような鮮やかな赤ではないですね。慣れた人に聞くと「もう10年前の赤色にはならない」なんて言うらしいです。十分綺麗なんですが、期待値が高かった分感動はそれなりでした。

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北穂高岳方面。昨年登ったなあ。

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奥穂高岳へはザイテングラードから登りますが、涸沢からザイテングラードまで結構距離があります。

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ザイテングラードに着くまでに結構消耗しました。

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ザイテングラード自体は登りで歩く分には難しい所も特になかったんですが、後からトレランのめっちゃ早い人が来て、何となく一緒に歩く感じになって結局ものすごいハイペースで登ってしまい、かなり足に来ました。オーバーペースだった。

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穂高岳山荘11時20分頃着。涸沢から約1時間で着いた。これから向かう奥穂への登りも混雑してるなあ。

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山荘直上が結構危険で渋滞も激しい。そこを超えると岩ガレ登山道。

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危険ではありません。

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山頂が見えました。思ったより空いてるな。

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11時54分奥穂高岳登頂。上高地から5時間半かかりました。

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北穂と大キレットと槍ヶ岳。来週大キレット行きます。

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薬師岳と裏銀座の山々。来週双六から西鎌尾根歩きます。鷲羽岳方面は来年。

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ジャンダルムにも大勢登っていました。西穂への縦走はまだ覚悟が決まらない…。

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奥穂山頂で15分ほど休憩して、下山にかかります。まずは吊尾根の通貨ですが、吊尾根結構怖いんですよね。

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基本岳沢側の登山道をトラバースしていきますが、ちょいちょい切れ落ちていて高度感あります。渋滞も所々発生して時間を取られます。

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この辺ですれ違いにかなり時間がかかりました。重装備戦士タイプの人たちばっかり。

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今日はこれまでの登りでかなり脚を消耗していて吊尾根通過にも時間がかかりました。紀美子平1時半着位で前穂往復は時間的に厳しい。体力も残り少なかったんで今回前穂登頂は諦めました。さっさと下山します。

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西穂へ続く稜線上の間ノ岳でもヘリで収容作業していました。この方は手首骨折で自分で救助要請したらしいです。この日は事故が多かった。

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重太郎新道の下りは結構危険度高いです。

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重太郎新道の下りは、とにかく長かった。前も思ったけど吊尾根から重太郎新道の下りは結構急斜面だし切れ落ちてるところ多いしかなり危険だと思います。そして長い。

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岳沢小屋2時40分着。

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木道が見えてくるとゴールは近い。

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岳沢登山口3時45分着。バスまでギリギリです。ここからバスターミナルまで15分ほど。辛かったけど何とか無事下山しました。

今回は疲労もあってか紀美子平から上高地まで3時くらいかかりました。普通の人なら5時間くらいかかるんじゃないかな?もうこの下りはしばらく歩きたくないと思いました。

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4時の河童橋もまだ混んでた。あそこを歩いてきたのか・・・。感無量です。

滑落目撃について

屏風パノラマコースで涸沢に向かう途中、滑落者を目撃しました。もちろん初めてのことです。
電波が入らなかったので通報は同行者の方に任せて、僕は涸沢ヒュッテまで救助要請しに走りました。現場から急いでヒュッテに30分後くらいには到着、登山相談所に滑落があったことを伝え、その後涸沢の山岳警備隊で詳細を救助隊員の方に伝えました。その後、山岳警備隊の方は無線で本部とやりとりして、通報があったかどうか定かではありませんが、2名の隊員が現場に救助に向かわれました。

結果としては、滑落した方は骨折されたようですが、命は助かったようでした。ほっとしました。
思ったのが、登山者から「滑落があった!」と伝えられた瞬間、屈強な島崎三歩みたいな山男がダッシュで救助に向かうorすぐにヘリが飛んできて収容してくれる、というイメージを描いていましたが、現実はそうでも無いんだな、という事。救助に向かうまでかなり時間がかかります。ヘリだっていつも飛べるとは限りません。

僕はかなり慌てた状態で、「滑落したからすぐに救助に行ってくれ!」ってテンションなんですが、話を聞いてる警備隊(警察官)は慌てる様子もなく、淡々と事務処理をこなす感じ。色々聞かれる中で、「そんな細かいことはわかんないから、すぐに救助に行ってくれよ!」と正直思いました。「あなたは同行者から救助に行ってくれ、と頼まれたんですか?」って聞かれたんですが、そうじゃなかったら救助要請にならないってこと?「違います」って言ったら救助に行かないんですかね?どうも役所っぽいな、という印象を受けたのは事実です。

今回色々と思うところありましたが、滑落現場で我々素人ができることは限られています。滑落者の所まで降りて行くなんて絶対できないし、救助要請するくらいしかできない。救助要請も電波入らなければ山小屋に助けを求めるしかないです。自分にできることを全てやれたかと言われると自信ありませんが、貴重な経験になりました。皆さん、落ちたらいけませんよ。くれぐれも注意しましょう。

距離・標高差など

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  • 出発時刻/高度: 06:21 / 1513m
  • 到着時刻/高度: 16:08 / 1513m
  • 合計時間: 9時間46分
  • 合計距離: 23.04km
  • 最高点の標高: 3162m
  • 最低点の標高: 1509m
  • 累積標高(上り): 2257m
  • 累積標高(下り): 2245m

ヤマレコの記録だと距離23キロですが、SUNNTOだと32キロになるんですが、どっちが正しいんだろ?30キロくらい歩いた疲労感は余裕でありますが…。

まとめ

紅葉シーズンの涸沢は初めてだったので、日本一と言われる紅葉を楽しみに来ましたが、今回一番綺麗だったのは屏風のコルの紅葉した木々の間から見える槍ヶ岳でした。涸沢の紅葉もきれいでしたけど、曇天だったせいかそこまで感激はしなかったなあ。赤っていうかオレンジでしたね。滑落シーン目撃直後で気が動転していたってのも大きいですけど。

終わってみれば、パノラマコース経由の涸沢・奥穂・吊尾根ルートとしては結構早めの10時間弱で帰って来れました。横尾経由なら渋滞していても前穂もいけたと思います。(横尾まで走らないといけないですが。)

ここ数年毎年日帰りチャレンジしていますが、今年は(も)かなり疲れたので、来年はもうやらないかもしれません。おっさん化の進行が早くて気力体力がもたねえ・・・。次の日は死んでました。

でも終わってみるとやっぱり楽しかったです。スピードハイク大変ですけど、時間に対して凝縮された濃密な体験が病みつきになるんだよなあ。

今回トレラン装備で日帰りの人も結構いましたね。とはいえこのルート日帰りは誰でもウエルカムなプランではありません。高山の稜線通過には時間がかかるし、急ぐと安全がおろそかになります。自己責任でお願いします。

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いよいよイノヴェイトのシューズのグリップが消失してきて、これで3000m縦走は危険を感じるようになったので、新しいシューズを買わなければいけない。