2019年9月13日(金)、北アルプス穂高連峰に登ってきました。例によってマラソントレーニングを兼ねたスピードハイクで、穂高連峰日帰りチャレンジです。
例年秋のこの時期は山に登ることにしていて、今年もロング走代わりにどこか行こうと思っていました。当初は扇沢から爺ヶ岳経由鹿島槍あたりに行こうと考えていたんですが、先日の常念登山で穂高連峰をずっと見ていたら、「やっぱりメジャーな穂高連峰に行きたい」という思いが日に日に強くなりまして。
で、ヤマレコでコースタイム見てみたら
18時間とかなる訳ですが、昨年も上高地日帰りできたし、標準コースタイムの6掛けくらいで行けば何とかなるかと、実行に移すことにしました。 難所もあるし時間の制約はきついし早起きしなきゃで実際はかなり気が重かったのですが、「できるかどうか、自分の力を試したい」という思いが勝ちました。
日本を代表する山岳「穂高連峰」
ご存知ない方のため簡単に説明しますと、穂高連峰というのは北アルプス南部の「奥穂高岳」を中心とした山岳地帯でして、北穂高岳・奥穂高岳・前穂高岳・西穂高岳という4つの穂高岳があります。いずれも3000mを超える高峰で、奥穂高岳の標高3190mは国内第3位となっております。それこそ日本を代表する山で、北アルプスでも槍ヶ岳と人気を二分する山。岩がゴツゴツした男らしい山容で、登山家の憧れの山です。
日本一の山岳リゾートとして名高い上高地から見えるこの景色を見たことある方も多いと思います。上高地を代表する山岳景観ですが、
写真中央奥に見える岩の壁が「吊尾根(つりおね)」といいまして、尾根の左側にある岩山が奥穂高岳、右側にちょっとだけ見えるのが前穂高岳になります。左に続くギザギザの山が西穂高岳への稜線で、有名な涸沢カールは吊尾根のちょうど反対側になります。ちなみに槍ヶ岳は吊尾根の更にずっと奥にあります。上高地は一般的には景勝地ですが、登山者にとっては槍ヶ岳や穂高連峰を目指す玄関口なのです。以上初心者向け説明終わり。
穂高連峰というのは普通は絶対日帰りでなんか登らない山なんですが、僕はそういう山にこそ日帰りで行くことに喜びを見出しております。体力的には大変ですが、時間がギュッと凝縮された濃密な体験が、やり遂げた時の達成感をより深いものにしてくれます。 まあ終わった後はもう二度とやらないって思うんですが。
ルート・コースタイム
今回もシャトルバス利用の上高地発着のコース設定です。上高地を起点に、涸沢から北穂高岳、涸沢岳、奥穂高岳を縦走して、岳沢から下山するというゴールデンルート。登山好きなら一度は歩いておきたい北アルプス屈指の名コースです。
一般的には涸沢で一泊、奥穂で一泊する2泊3日のコースとなりますが、それを日帰りで踏破するチャレンジ。バス時間の制約で朝6時30分スタート、17時までに下山する必要があります。このバス時間の制限が難易度を一気に高くしています。ちなみに距離は30キロほど。
結果的には、無事日帰りで帰って来れました。
今回のコースタイムです。 かなり頑張りました。まあ相当ハードでしたが、チャレンジした甲斐あって非常に達成感のある山行になりました。
当日の様子
平日始発シャトルバスで6時半過ぎに上高地到着。トイレを済ませ出発。
曇天ですが吊尾根は見えています。ここから横尾までは走ります。慌ててスタートしましたが、小梨平のコテージエリアに迷い込んでしまい10分ほどロスしました。小梨平ってあんなに立派なコテージ村があるのね。ていうかいきなり道に迷って大丈夫か自分?
明神徳沢とわき目もふらず、10キロ走って7時50分に横尾到着。ここまではほぼ予定通り。この平坦区間でタイムを短縮することが日帰りチャレンジでは必須となります。そしてここで、空で持ってきたハイドレーションに給水。
横尾大橋を渡り、涸沢を目指します。
この道は来るたびに綺麗になっている気がしますが気のせいでしょうか?
見上げると屏風岩の大岩壁。写真じゃ伝わらないですね。
8時30分に本谷橋通過。ここから本格的な登山道になります。それまでの緩斜面から急斜面にいきなり変わって戸惑います。 息も一気に上がる。
9時Sガレ通過。もう2時間も経っているのか。 でもまだこの辺は元気です。
涸沢カールが見えてきました。
9時15分涸沢分岐到着。右方向へ向かいます。
涸沢小屋手前でアクションカムを準備しますが、バッテリー不良で電源が入らず。持ってきたモバイルバッテリーでも通電せず焦ります。予備バッテリーに交換したり、ザックのジッパーが壊れたりして10分ほど停滞しました。
涸沢テント場はまだ空いていました。この後三連休は混むでしょうね。
涸沢小屋手前を右手に進み、北穂への登山道に取り付きます。最初は草付きですが、斜度はけっこう急で息が苦しい!
道は険しいですが、穂高連峰は登山道が本当に綺麗に整備されてます。そしてペンキマークが超充実。ひたすら〇を追う。
黙々と登ります。気づけば涸沢ヒュッテがあんなに下に。
しかし、左膝痛と左ひざ裏痛のせいか思ったほどスピードが上がりません。予定では11時前には北穂に登頂しているはずが、少し遅れています。
そういえばこのルートで北穂に登るのは初めてでした。下りは10年以上前に経験していますが。
北穂の山頂らしきものが見えてきましたが、体力的にはキツイ!そして時間が気になりだします。
梯子も鎖もそれなりにありますが、難しい所は無いです。ひたすら〇を追う作業。
やっと分岐まで来ました。この直上が最高地点の北穂南峰らしいですが、一般登山者は三角点と小屋のある北峰を目指します。
11時10分北穂高岳登頂。スタートから4時間半かかりました。疲れたー。
昨年槍ヶ岳登った時とほぼ同じ時間がかかりました。尚標準コースタイムは上高地から8時間半です。速い事は速いが、想定より少し遅いです。
大キレット。今回の登山の目的の一つが大キレットの練習なんですね。今年は無理かもしれませんが来年は挑戦したい。
これが南峰かな?涸沢岳方面からの写真だと思います。
時間も押しているので先を急ぎます。ここからが本日一番の難所涸沢岳方面への縦走路。ギザギザしてんなー。右側は滝谷が遥か下まで切れ落ちています。
この縦走路は切り立った岩稜歩きがメインなので、こういうテラスに出るとほっとします。
写真中央の涸沢岳直下のトラバースが核心部でしょうか。
振り返って通ってきた稜線を見ると、右側涸沢カール方面と左側滝谷方面では山容が大きく違いますね。
核心部は鎖梯子が連続します。足元を見ると切れ落ちていて恐ろしいですが、ホールドはしっかりしているので確実に動けば難しくはありません。慎重に行きましょう。
夢中で難所を通過していたら、涸沢岳が見えてきました。
通ってきた稜線を振り返る。上級者向きと言われる登山道ですが、北穂高岳から歩けばそこまで難しくは無いと思いました。10年前に逆方向から歩いた時はかなり怖かった覚えがありますが。
涸沢岳には12時30分到着。狭い山頂でカール側が切れ落ちています。写真だけ撮って出発。
涸沢岳からの下りは安全な登山道。本日の難所を超えてほっと安心していました。が、予定より遅れているので時間が気になります。
奥穂高岳山荘には12時40分到着。予定より30分ほど遅れているので休憩せずにそのまま通過します。かなり疲れていたので本当は休みたかったのですが、バスに乗り遅れるのだけは避けたかったので。
山荘すぐ横から奥穂山頂を目指します。
山荘から急斜面を登ってきました。滑落防止ネットが見えます。この辺下りだと怖いんですが、登りだと楽勝ですね。
飛騨側からガスが湧いてきて、槍ヶ岳が見えなくなりそう。
もうじき槍ヶ岳ともお別れ。いつ見てもカッコいい山です。
この稜線上から見えるジャンダルムはかっこいいですね。いつかは西穂への縦走もチャレンジしたいです。 そして気付けば雲海。
奥穂山頂直下にライチョウがいました。まだ若いつがいでした。久しぶりに見た。猿に襲われないように頑張って生きて欲しい。
間もなく奥穂高岳山頂です。結構混雑しています。
奥穂高岳に1時10分登頂。スタートから6時間半かかりました。疲れた。本当に疲れた。
歩いてきた稜線を振り返る。この人たちはみんな奥穂高岳山荘に泊まるんだろうな。いいな。ここまで何人かとお話ししましたが、「上高地から来て今日帰るんですよ」と言うと「えっ?帰るんですか?今から??」と全員に驚かれました。ですよね。
奥穂山頂には5分ほどいました。祠の前で写真でも撮るかと思いましたが、団体の方がいたので諦めて早々に下山することにします。本日最高地点を超えて後は下るだけ。ここから3時間半以内で上高地まで下山しなければなりません。辛い。
今日は視界がクリアで、遠く富士山まで良く見えました。
涸沢も遥か下に見えます。もうじきガスに隠れそう。
急いで帰りたいところですが、吊尾根がなかなかに難所です。奥穂直下の鎖とか結構怖かったです。 やっぱり下りで高度感あると怖いですね。
西穂からのギザギザの稜線。あれはキツそうだわ。
前穂東陵はいつ見てもかっこいい。
吊尾根をヒイヒイ言って通過し、紀美子平には14時15分着。吊尾根通過に1時間近くかかりました。 青空が出てきて暑くなってきました。そういえばこの日が風があまり無くて快適でした。
ここからは2時間で下山できると踏んで、15分だけ休憩することにします。本日初めてザックを下ろしての大休止。お腹もすいてきたのでたんぱく質補給。サラダチキンバーは食べやすいしたんぱく質豊富でおすすめの行動食です。
軽量化のため350mlにするかギリギリまで悩んだビールはサイコーでした。(持っていかないという選択肢は無い)
休憩もそこそこに、急いで重太郎新道を下りますよ。でも重太郎新道の上の方は結構岩場鎖場が続いて厳しいんですよ。もうこっちはヘトヘトだし泣きそうでした。足も痛いし。
思ったよりきつい下りでしたが、予定通り1時間で岳沢ヒュッテまで下りてきました。すっかりガスの中です。
三連休前だからか、ヒュッテは混雑しているようでした。最悪ここで宿泊するつもりでしたが、何とか間に合いそうなので華麗にスルーして下山を続けます。
しかし上高地山荘グループは儲かるだろうなあ。前穂直下あたりに山小屋作ったら絶対儲かるだろうなあとか考えていました。もう相当疲れていました。
上高地が見えました。あと少しのはずですがこの区間の下りも長くて堪えました。
振り返ると稜線はガスで見えず。
4時半、やっとのことで上高地までたどり着きました。終わった・・・やっと休める、と思ったのですが、ここからバスターミナルまで1キロくらいあるんですよね。もう勘弁して。
ともあれ、何とか終バスに間に合うように戻ってこれました。今日もケガ無く下山出来て良かった。健康な体に生んでくれた親に感謝です。
出発から10時間、32キロの旅でした。
上高地バスターミナルは売店も閉まって閑散としていました。昨年4時の時点ではまだごった返していましたがなぜ?最終バスも乗車2名のみでした。
上高地インフォメーションセンターにはコインシャワーがあるので時間があれば利用してみたい。1日歩いてクサいままバス乗るの申し訳ないので。
紫色が歩いた軌跡です。 反時計回りで穂高連峰をぐるっと一周の旅。
服装・持ち物
いつも通りのトレランスタイルですが、今回は険しい道が多かったのでタイツ履いていきました。15年物のCW-Xですが、まだまだ使いますよ。シューズはイノヴェイト。そろそろダメージが目立ってきたので、新しいシューズ購入も検討しなければ。
岩場鎖場が多いのでグローブも装備しました。
食事は、inバープロテインとかのエナジーバーを3本、ジェル飲料1個、おにぎり2個、ホットドッグとサラダバー、菓子パン1個持って行きましたが、おにぎりとパン1個ずつ残して全部食べました。この工程だと消費カロリーは7000キロkcalを超えるので、行動中にグウグウお腹がなります。脳も疲れるし食事は大切です。
ドリンクはBCAAをハイドレーションで1.5リットル、クエン酸ドリンクを500ml、ビール500mlでした。これも全部飲み切りました。足りない場合は各山小屋での補給になります。1リッター200円くらいします。
まとめ
上高地を起点に、北穂高岳、涸沢岳・奥穂高岳を縦走して岳沢から下山というゴールデンルートを日帰りで歩くというチャレンジでしたが、何とか成功しました。
最悪タクシーで帰るか、どこかで停滞したら奥穂高岳山荘か岳沢ヒュッテに泊まれるだけのお金は持ちました。が、実はこの日ヨメさんの誕生日で、夜は誕生日会をやることになっていて、ケーキも買って帰らなければいけなかったので、何としてもバスに乗らなければいけなかったのです。
昨年、一昨年と似たようなことをやっていますが、やはり上高地起点だとシャトルバスの時間制限でハードルが高くなります。今回も終始バスの時間を気にしていました。ちなみに今年の沢渡発上高地シャトルバスは平日6時始発(土日は5時始発)です。昨年より20分遅いのでその分スタートが遅れて難易度が上がりました。
実は、2年前このルートの逆回りで、上高地⇒前穂⇒奥穂⇒涸沢⇒上高地というルートで登りました。こちらも非常にキツかったですが、北穂から奥穂への難所を入れた今回のコースの方がやはり体力時間ともに厳しめでした。
また今回は、北穂から涸沢岳へのいわゆる難所と言われるルートを久しぶりに経験することが目的の一つでした。しかも可能な限り早く、かつ安全に。近いうちに大キレットに行きたいと思っているので、その練習として。難所はしばらく歩いていないので、どの程度怖いのか確認したかったんですよね。
結果的には、思ったほど怖くなかったというのが正直な感想です。切れ落ちているところは確かに怖いですが、ビルの屋上から下を見るようなもので、しっかりと確保していれば安全です。(天候や体調、荷物の重さによるところも大きいのは言うまでもありません)
とはいえ、やはり3000m級を縦走するのは時間も体力も消耗しますね。体力がどんどんなくなっていくのに、バスの時間が気になってゆっくり休めないというのがきつかった。距離も長いし、下山路も急斜面なので足にきました。今までの日帰り登山で一番しんどかったです。
「できるうちに、できる限りチャレンジしよう」という気持ちでやっていますが、このルートの日帰りは多分もうやらないですね。そのくらいキツかった。おすすめはしません。
最後に、ある意味無謀なチャレンジです。同じことを推奨はしません。僕は40代半ばの普通のおじさんですが、このタイムでいける、というある程度自信をもっているし、登山歴もそれなりに長いので想定しうるトラブルには対応できる準備をして臨んでいます。こんなことをやっていても、安全第一を心掛けています。半分自慢ですが、半分は他の方の参考になればという思いで公開していますことをご理解ください。
でもまあ、今回も無事日帰りで帰って来れたし自信になりました。10時間歩き続けたしそろそろウルトラマラソンでも出てみようかな。