MSX3メモ ~マラソン・トレラン・登山のあれこれ~

アルコールを中和するために走るおっさんが登山やマラソンのことをメモするブログ。マンガゲームウイスキーについても語る!

2022年8月29日・30日 西穂高岳からジャンダルム・奥穂高岳・北穂高岳テント泊縦走 アルプス最難関ルートを遂に踏破

北アルプス・穂高連峰に登ってきました。新穂高からロープウエイで入って、西穂⇒奥穂⇒北穂(テン泊)⇒上高地に下山というコースでした。

当初2日目に「北穂から大キレット通過して槍ヶ岳まで歩いて新穂高に下山」という難所繋ぎの壮大な予定を組んでいたのですが、1日目疲れすぎたのと2日目朝から雨だったため、大キレットを回避して上高地にエスケープしました。

大キレットと槍ヶ岳は行けませんでしたが、念願だった西穂高岳から奥穂高岳の縦走路を踏破することができました。ご存知の通り国内屈指の難ルートとして名高い縦走路。計画から実践まで色々ありましたので、記録を公開します。

壮大な「真夏の大冒険」計画

  • 「西穂~奥穂」「奥穂~北穂」「大キレット」という難所をつないで歩く
  • 西穂から槍ヶ岳まで3000m峰7座(西穂入れれば8座!)をつないで歩く

北アルプスの難所を「ひとつなぎで」踏破するという大冒険計画でした。

「山と高原地図」の標準コースタイムの70%で歩いて20時間、距離は26キロほど。1日目のスタートが遅いので予定では北穂小屋に着くのが18時半とかになりますが、2日目は4時頃には新穂高に戻って来れるらしいので行けない事もない。

時間がかかったり体力的に厳しければ短縮ルートを考えるとして、夏山登山のメインイベントだしやるしかない!と大筋このプランで決めて計画しました。

今年の夏は天気が悪い

さて、計画はしたものの毎日天気が悪い日が続きました。もうね、毎日曇天です。思い返せば6月末の梅雨明け以降、ずっと天気悪くない?ってくらいスッキリ晴れません。お盆も台風直撃してたし、その後の土日も雨だったし今年の山は本当に天気に恵まれていません。

幸い僕は平日登山に行ける身の上なんでまだマシなんですが、僕の登山予定日の8/29も、1週間前くらいに見ると雨予報・・・。秋雨前線が停滞して大気の不安定な状態が続くらしい。それから毎日天気予報見ていましたが、2日前くらいには29日だけ奇跡の晴れマーク!30日は曇りだけど、これで行ける!と安心しました。

ルート・コースタイムなど

結果としては、生きて帰ってきました。そして1日目テン場に到着したのは17時半でした。西穂~奥穂はかなり早く歩けましたが、奥穂~北穂が時間かかりました。

なお、今回は難ルート&コースタイムが長いので、荷物は極力軽量化してビールも一眼レフも持ちませんでした

それでは、実際の登山の様子をキャプション形式でご覧ください。

登山の様子

8/29(月)は新穂高温泉無料駐車場からスタート。ロープウエイ始発が8時と遅いので、いつもの登山よりゆっくり出発で余裕がありました。駐車場は月曜朝でもほぼ満車に近くて驚きました。

天気予報通り晴れていますが、ちょっと雲が多いのと、雲の動きが早いのが気になりましたが、最近の天気の悪さからみれば十分でしょう。

登山も長くやってますが、新穂高ロープウエイの利用は初めてです。2区間で2000円と結構いいお値段です。この日は平日にもかかわらず大勢の利用客がいました。土日やお盆休みなどは相当混むんでしょうね。

shinhotaka-ropeway.jp

乗り換え含めて30分弱で登山口の西穂高口に到着。ここはすでに標高2150mです。本日3回目のウンチを綺麗なトイレで済ませて、早速出発です。

わき目もふらず急ぎ足で歩いて西穂山荘には9時10分到着。

目指す西穂高岳まではアルプスらしい稜線漫歩ですが、急ぐ身の上なので下向いてひたすら歩きます。山荘から出発して帰ってくる登山者と大勢すれ違いました。西穂は混んでるなあ。

西穂丸山からは笠ヶ岳が綺麗でした。笠ヶ岳もいつか登らなきゃなあ。

独標9時50分着。ここまで登山口から80分、山荘から40分とかなりハイペースです。

相変わらずどれが西穂山頂なのかわかりづらい。奥は奥穂だってのはわかりますが。

独標から先はややアルペン的なムードの登山道に変貌しますが、2回目だしこの辺はまだ余裕です。とにかく早くスタート地点につきたい。

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独標から1時間ほどで、西穂高岳2909m登頂しました。テント装備でこのタイムなら悪くない。体調はいいようです。

山頂からは、北アルプスの奥の方が綺麗に見えていました。やや雲がありますが、風もなく非常にいいコンディションです。気温も高かった。

目指す奥穂方面。緊張してました。

勇気を振り絞って、難所に入ります。落ち着いて行こう!

西穂山頂から5分ほど進むとスタート地点のP1で、おなじみの戒め看板があります。ここからが気の抜けない悪場のはじまり。

写真だとよくわかりませんが、尖った山々がいくつも連なった奥穂への稜線。慎重に、気を抜かずに進みます。

鎖もありますが、本当にヤバい所だけです。後は基本的に自分で確保して通過していきます。浮石が多く、掴みやすい所の岩が動いたりするので慎重に「落ちるかもしれない」と思いながら行動します。

リッジ上のガレ場。浮石もありますが、思ったより道は踏まれていて足場はしっかりしていました。

西穂から最初の谷を越えたあたりで振り返る。ここまではそれほど危険な所は無かった。でも油断はしない、と。

ペンキマークはたくさんあって、天気が良ければルートミスの心配は無さそう。そしてこの岩場も、ガイドブックには「垂直の岩場」とか書いてあるけど全然垂直じゃなくて余裕でした。ここまで、思ったほど怖くないぞ。

西穂を振り返る。油断しなければここまでは大丈夫。

この辺が間ノ岳の山頂だと思いますが、標識は無かった。次のピークが天狗の頭かな。

あの異様な山肌はかの有名な逆層スラブでしょうか?

鞍部にビバークポイントがありました。ここでテント張るのはヤダなあ。

逆層スラブです。確かにこのデザインはインパクトありますね。強そう。上部がハング気味ってのもわかりました。この岩壁の左端に鎖がかかっています。

昔読んだガイドブックで西穂奥穂間の恐怖の象徴だった逆層スラブの長い1本鎖ですが、実際行ってみるとたいしたことなかったというのが実感です。写真だととにかく垂直に見えますが、実際には普通に鎖が無くても上り下りできそうな斜度。下りは怖いかもしれませんが、登りだと楽勝でした。

歩いてきた道を振り返る。こうやって落ち着いて見ると、結構しっかり踏み跡がついているんだなとわかります。

逆層スラブを登り切って標識は天狗の頭だと思いますが、消えていて読めませんでした。

ややガスが出てきましたが、風はほとんどなく非常に暑かった。

次のピーク目指して進みます。基本的に稜線上の道なので両サイドは切れ落ちているのですが、この辺までは思ったより高度感なくて怖くなかったです。

所々にナイフリッジが出てきますが、強風や雨でもなければそれほど危険な道ではないと思います。それでも下を見ると怖いのでなるべく見ないようにしていましたが。

そろそろこのコースの半分にあたる天狗のコルです。このマップも何度も見たなあ。

かなりの高度を下らされる。ギザギザをトレースしていくのでアップダウンが多くて結構疲れるんですよね。

天狗のコルに到着。このコース唯一のエスケープルートである岳沢へ下る道があります。コースタイムは西穂から3時間ですが、1時間半ほどでこれました。ここまで巻けるとは思っていませんでした。

後半戦ですが、しばらくは同じような岩稜の道。特段危険な所は無かったけど、これから奥穂に向けて高度を上げていくので、登りが辛かったです。

油断大敵、こういうどうって事無い所で事故は起きる、と言い聞かせて集中して登りました。

そして、ジャンダルム登場です。西穂側から見るジャンダルムはこんなふうにずんぐりむっくりの山です。

左手側に回り込んで、ジャンダルムに登ります。わずかの登りでした。

ジャンダルムに登頂!僕も天使とご対面できるとは。

ジャンダルムにはそれほど執着無かったですが、実際登ってみると感激しましたね。思わず満面の笑み。そして思ったより簡単に登れることにびっくり。もっと険しい岩峰だと思ってた。

ジャンダルムをクリアしたので、いよいよこのコース最終区間に突入します。岩場の難易度的には、ここからがヤマ場となります。

ガスってきましたが、こちらが北側から見たジャンダルムです。ここを直登する輩もいるようですが、これも遠くから見た特徴的なジャンダルムの迫力は無かったですね。普通の岩でした。

ジャンダルムの後は、ついに最終セクションかつ最難関とされるエリアです。まずは「ロバの耳」です。急峻な岩峰ですが、飛騨側に巻いて通過します。上の写真だと超怖く見えますが、両側切れ落ちていて落ちたらアウトですが、ペンキマーク充実だしホールドもしっかりあるので、そこまで怖くなかったです。

続いてロバの耳とウマノセを繋ぐ岩壁。ここが一番急な斜面だったと思います。後続パーティがいたので落石を起こさないように慎重に登りました。これも写真では絶壁ですが、実際にはそこまで難しい斜面では無いです。とはいえ、降りで通過するのは結構怖いでしょうね。

先ほどの斜面を登り切って上から見た写真。奥にうっすら見えるのがジャンダルム。

そしてラスボスがこちら、ウマノセです。人が写るとスケールがよくわかりますね。

「こんな所渡っていくの?」って感じの道です。両側切れ落ちた綺麗なナイフリッジ。これはラスボス感あるわ。この時はガスってましたけど、晴れてたら確かに怖そう。

でもですね、これもなんですが実際歩いてみるとそこまで怖くなかったです。この写真はわざと怖そうに撮影していますが、こんな所でさえしっかりとホールドがあって、安定してます。1か所でもしっかりとしたホールドを掴んでいれば、安心なんですよね。今回の登山で発見したんですが「ホールド安心の法則」です。(1か所でも安全なホールドを掴んでいれば安全で安心する、という意味。)この法則を発見してからは、鎖場なんか完全に安心なので全く怖くなくなりましたよね。

怖そうなウマノセもさほど怖くなくて若干拍子抜けです。やっぱりyoutubeとかで見る超広角映像は恐怖感を倍増させているなあ。

ウマノセのラスト、細いリッジを慎重に通過しまして・・・

終わりが見えてきました。ここまで来ればもう安全です。ラスボスクリア。

西穂~奥穂間をやっつけました!

わずかの登りで奥穂高岳山頂。今回の登山では山頂はおまけみたいなもんですね。

奥穂登頂は14時35分でした。西穂出発が10時55分なので、3時間40分ほどで西穂奥穂通過したことになります。予定よりかなり早く歩けました。

15時10分に穂高岳山荘に到着。他の登山者はすでにまったりモードですが、時間的にはまだ余裕があるので計画通りこのまま北穂まで進みます。

涸沢岳までの登り返しが何気にキツイ。ちなみに奥穂から北穂へ向かうのは15年ぶり2回目です。昨年長男と来た時は雨で断念した道。

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15分ほどで涸沢岳登頂しましたが、ガスに巻かれて風も強くなってきた。さっさとテントで休みたいな~とかこの辺では余裕かましたました。北穂までせいぜい1時間くらいだと思ってましたが、ここから長かった。

涸沢岳登頂後、けっこうな下り。まだ降るの?ってくらい下ります。しかも急斜面で結構怖い・・・。

とはいえ、こちらには「ホールド安全の法則」があるので梯子や鎖はむしろ安心です。

でも誰も歩いてないし、地獄っぽい景観だし風は強いし、体は疲れているしでもう嫌んなりました。

涸沢岳直下からこの奥壁バンドというエリアが危険でしたね。落ちたらアウト区間。

西穂奥穂間と比べても岩場の難易度自体は変わらないくらい。ただこちらはしっかりとペンキマークと鎖梯子で整備されているので多少心強い。

涸沢から見える稜線を歩いてるんですね。

亀岩。こちらから見ると確かに亀。

難所終わり。結構ずっと危険な道でした。

南陵分岐という所で標識。ここまで来れば安全。疲れたー。ここを右に降るとテン場ですが、気付かず左へ進んでしまい・・・

「なかなかテン場に着かねえなあ?」なんて思っていたら、北穂高岳山頂に着いてしまいました。「???」でしたが、とにかく西穂・奥穂・北穂の3穂高を1日で登頂しました。誇らしいけどとにかく疲れました。時間はすでに17時15分過ぎてます。

荷物はテン場に置いて受付だけ来ようと思っていたのに、無駄に重荷で登ってしまった。この後小屋で受付して、ビール2本買ってテン場に向かいました。

北穂のテン場は小屋から10分くらい下って、先ほどの道標からまだ下にありました。この日の利用者はまさかの僕一人。疲れ切っていたので場所も近い所に適当に決めて、ヒイヒイ言いながらテントを設営。地面は石でペグが入らないけど固定は適当でいいや。

荷物整理して、体を拭いて、湿布貼って、防寒着着て・・・、陽が落ちて寒くなってきた午後6時頃にやっと落ち着いてビール。いつもは担いでくるけど今回は1本600円もする小屋のビールを買いました。うまい。

とはいえ、時間が遅いし外は強風だし、今回はテント生活をあまり楽しめなかった。夕食はあまり食欲無かったけど、食べないと今日の疲労が回復しないと思って無理やり鰻食べました。昨年も鰻だったなあ。フリーズドライの味噌汁が一番うまかった。

この後疲れ切って就寝しましたが、8時頃から猛烈に風が強くなり、たわんだテントの側面が顔に付くほど。一応西側に壁のあるサイトを選んでいたんですが、風が巻いているらしく四方八方から吹き付けてきてどうしようもなかった。しっかりペグダウンして無かったので、寝ていてもとばされるんじゃないかと心配でした。というような訳でぐっすり眠れず・・・。明け方頃、ようやく風が弱くなりました。きつい夜だった。

翌朝。一応4時に起きましたが外はまさかの雨・・・。まあ夜中に降っているのは知っていましたが。どうやらすっかりガスの中のようです。しばらく天気予報を見たりして情報収集しましたが、この後晴れることは無さそうで、むしろ雨脚が強まりそうなので、大キレットは諦めて下山することに決めました。

雨じゃ無ければ、多少天気が悪くても大キレット経由で南岳新道降って新穂高に降りる方が楽なんですが、ちょっと前にも大キレットで一人遭難してるし、あまり眠れずに昨日の疲労も抜けていない感じがしたので、上高地にエスケープとしました。涸沢から上高地までのダラダラ歩き、回避したかったんですがしょうがない。

北穂から涸沢までの下りも結構急ですが、昨日歩いてきた難所に比べればやっぱりイージーですね。とはいえ雨で滑るのでそれなりに気を使います。途中から猿に先導されて涸沢まで下りました。

暑いしそろそろカッパ脱ごうかな、と思った頃本降り。登ってくる人も少なかった。

涸沢小屋から見た穂高の稜線は雲の中でした。

黙々と下ります。もう景色とか見てませんが本谷橋。

横尾には9時過ぎ着。雨は小降りになりました。ここまで来ると登山者が大勢いました。この後は徳沢も明神も素通りしてひたすら歩き続ける我慢時間。

11時半過ぎには河童橋まで辿り着きました。この後、12時のバスで平湯経由新穂高まで戻りました。

これにて、登山の記録は終了です。

今回の「初めて」

  • 新穂高ロープウエイ
  • 西穂~奥穂の縦走
  • ジャンダルム登頂
  • 北穂小屋のテン場
  • テン場に一人だけ

やっぱり初めてのことがあると楽しいです。

かかった費用

  • 安房トンネル 2×790円=1580円
  • 新穂高ロープウエイ片道 2000円
  • 穂高岳山荘 水 200円
  • 北穂高小屋テン場 2000円
  • ビール2本 1200円
  • バス 1180円+840円=2020円
  • 計 9000円

貧乏ドケチ登山が信条ですが、今回はテント泊ながら結構お金使ってしまった。バス代が予定外でした。

まとめ

西穂~奥穂間は国内随一の難ルートということで、登る前はすごく心配だったけど、怪我無く無事通貨できてよかったです。そして1日目は行動時間が長い攻めた登山だったので、非常に疲れました。

今回は岩場の通過ばかりだったこともあり、スキルがかなりアップした気がします。「ホールド安全の法則」という心理を発見してしたし、これでもう一般ルートはどこの岩場でもビビること無く行ける気がする。次のステップはバリエーションですね。

9月はどうしようかな。もうキツイ山歩きはちょっとやめにして、ゆるく写真でも撮りながらゆっくりテント泊したいと思います。