2019年7月26日(金)、第72回富士登山競走の五合目コースに参加してきました。
富士登山競走はとにかく人気の大会で、参加することも容易ではありません。とくに参加条件の無い五合目コースはシビアなクリック合戦を勝ち抜かなければならず、参加できるかどうかはほとんど運任せです。僕はラッキーなことに何とか繋がり、エントリーできましたが、今までで一番繋がらなかった大会です。ちなみに枠は五合目コースが1276名、山頂コースが2500名です。山頂コースにエントリーできるのは過去3年に五合目コースを2時間20分以内にゴールした選手のみという条件があるので、山頂コースの方が比較的エントリーは容易なようです。
この富士登山競走、前半10キロをロードの上り坂、後半5キロをトレイルの上り坂というコースです。標高800mの富士吉田市役所から2250mの富士山五合目まで標高差1500mを一気に登る過酷なコースですが、「日本一の富士山を目指して走る」という特殊条件があることもあり、マラソンでもトレランでも無い「富士登山競走」というジャンルを確立している感じがあります。
市民ランナーグランドスラムの一つに数えられ、多くのランナーにとってランナー人生のひとつの目標である富士登山競走に、僕のようないいかげんなランナーが参加してしまい申し訳ない気持ちもありますが、レースの様子をレポートします。
前日受付必須
前日17時頃まで仕事して、高速飛ばして20時頃受付会場の富士吉田市民会館に到着しました。受付会場周辺に駐車できると思ったらまさかの駐車場が無く、警備員に聞いたら「指定された駐車場からシャトルバスで来い」とのこと。うーん、2~3分で終わる受付のために10分以上離れた駐車場まで行って、そこからまたバスに乗って来て受付数分してまたバス乗って帰るってのも何だかなあ、と思い、結局近くのコンビニに車を止めて受付をしました。
今年からレギュレーションが変わって前日受付が必須になったことと、この受付会場に駐車スペースが無い事は結構不便ですね。前日受付必須なのは長野マラソンとかもそうなんで理解しますが、駐車場無いのはかなり不便・・・。なお受付は夜9時までやっていて、8時過ぎでも多くの人が受付に来ていました。平日の開催だし2日間平日休むのが困難な人も多いんでしょうね。
受付会場から車で5分ほどの所に予約した安宿はありました。お化けが出そうな古いビジネスホテルですが、一泊4600円と格安です。ホテルも非常に取りにくいですが、例によって楽天トラベルで毎日チェックしてポロっと出てきた1部屋を10日前くらいに予約できました。
夕食はコンビニ飯。ビール2本とサワーなど飲んで酔っ払って12時頃就寝しました。ちになみにこの買物の帰りの夜道で段差につまずいて派手に転倒し、左足を激しく擦り剝くケガを負いました。久しぶりに転んだわ。そして富士登山競走というハードなレースを翌日に控えた夜にこんな不健康な食事はダメ絶対!です。
レース当日
5時に起きました。天気は曇り。ホテル前から富士山が見えました。よく考えるとスタート8時でこんなに早起きする必要無かった。ぼーっと準備をしていると、6時頃にランネットのアプリから「山頂コース五合目打ち切り」と通知がありました。「富士山見えているのに打ち切りとかあるんだ。そして自分が山頂コースだったらすげえショックだろうな」とか思っていました。
指定された小学校に車を止め、シャトルバスで7時ちょっとすぎにスタート会場の富士吉田市役所に到着しました。丁度山頂コースの選手がスタートしていくところでした。
スタート会場には物販ブースがいくつか出ていました。そしてアミノバイタルブースでは赤のパーフェクトエネルギーと青のBCAA顆粒を無料配布していました。受付で配られた袋にもアミノバイタルのジェル飲料が2個入ってたし、味の素すげえな。
スタート会場で特にすることも無く他の選手を見ていたんですが、富士登山競走に参加する人はやっぱり普通のマラソン大会と全然違いますね。「健康のためジョギングやってます」みたいなぽっちゃりお父さんとか皆無で、皆さん「毎日走ってます!フルマラソン自己ベストは3時間10分でトライアスロンもやってます!」位は言いそうな、いかにも速そうな人たちばかり。見た感じ僕が一番遅そうで気後れしました。
ちなみに今回ふくらはぎ痛が非常に心配だったので、3000円もするCW-Xのゲイターを装着しました。見えませんがパンツ(下着)もCW-Xのサポートタイプです。シューズは履き古したターサージールで、ソックスはトレラン用の厚手タイプにしました。
いよいよスタート
トイレも2回出したし準備完了。8時からスタートブロック整列が始まり、色々な人の挨拶などセレモニーがありました。天気はこの時点では晴れて無風湿度高め、日差しが強くかなり暑かったです。そしていよいよ8時30分号砲でレーススタートしました。
スタート~馬返しまで
スタートしてから馬返しという所まではロード約10キロということは事前に調べてありました。ずっと登り坂だということも承知していました。多少きつくても10キロ位何とかなるだろうと思っていました。
最初の3キロくらいは市街地の緩い登り坂です。キロ4分45秒位のペースで比較的順調に走れました。心配したふくらはぎ痛は、気になりませんでした。ゲイターが良かったかロキソニンが効いたか。暑いのがちょっと気になりましたが、3キロ位で神社の角を曲がって森の中のコースに入ると日差しは無くなりました。が、ここから斜度が一段上がって、徐々に心肺がきつくなってきました。
「富士登山競走は前半のロードがキツい」とは色々なサイトに書いてあったので覚悟していましたが、こりゃ本当にキツいわ。5キロ超えたあたりからかなり苦しくなってきました。坂道は延々続きます。そして当然のように誰一人として歩く奴なんていません。6キロ過ぎ位で相当きつくて、油断すると歩いちゃいそうでしたが何とかこらえました。
中の茶屋で38分、距離約7キロ。あと3キロなら1時間以内に馬返し行けるでしょ、なんてこの時は考えていましたが、ここからが本当にきつかった。この辺から道幅が狭くなり、斜度もグッと増してきます。今まで参加したトレランレースだったら100%確実に歩いているような坂道ですが、歩いている人はいません。「おおおおおおお、なんだこの人たちは鉄人か!!!!」と激しく動揺し、そしてもう気力が限界です。足はまだそこまで疲れていないし、心拍数は確かに高いんだけど限界ギリギリでは無いんですが、どうにも走り続けることができずについに8キロ手前で歩いてしまいました。辛くなると休む癖がついてしまいました。メンタルが弱いのは改善できないなあ。
少し休んでまた走り出しますが、一回休んじゃうともうダメですね。体が楽を覚えてしまって走り続けることができません。走ったり歩いたり、その内ほとんど歩くことになりました。手元のSUNNTOで10キロ超えたのでそろそろ馬返しだろうと思っていましたが、なかなか馬返しに着きません。周りの人たちも徐々に歩くようになってきた頃、SUNNTOで11キロ過ぎにようやく馬返しに到着しました。予定では1時間以内に馬返しだ!と鼻息荒かったんですが、結局1時間10分もかかりました。
予想以上に登り坂走れずに歩いてしまったことにかなりショックを覚えていました。そしてここまでのロードで激しく疲れて異常なほど発汗していました。
さていよいよ後半戦です。たっぷり水分補給してすぐにトレイルに入ります。
馬返し~ゴールまで
馬返しの給水所からすぐに登山道に入ります。登山道はよく整備された土のトレイルです。所々石畳っぽくなっている所や、丸太で階段になっている所などがありましたが、いわゆる普通の登山道でした。斜度はきつすぎず緩すぎずといった所で、何となくよく登る光城山と似てるなと思ったり。富士山も森林限界以下の登山道は他の山と同じで何だか安心しました。
所々なぜかV字にえぐれている箇所があったりして、そういうところは追い抜きができないもんだから、人数が倍の山頂コースの時は大渋滞が発生し、かなりヘイトが渦巻いていたようです。五合目コースでは、列にはなっていましたが渋滞にはなっていませんでしたね。快適に登ることができました。
僕は坂道ランは一切練習しなかったですが、トレラン45キロは走ったし光城山も計7往復してきたので登山道の登りはしっくりきました。元々僕のルーツは登山なんで、落ち着いて登ることができたと思います。誰にも抜かれることなく、また何人かは抜きながら、早足で登っていきました。
とはいえ、タイムを気にしながら限界ギリギリの速度で登るので、それなりに疲れます。性能100%出してフルスピードで登っていたら、40分位で右足太ももの下の方に攣りの予兆を感じました。右足ばかり使って登っていたようなので、左右均等に負荷を掛けて、かつなるべくケツで登るように心がけました。標高が高くなって気温が下がってきたのはわかりましたが、相変わらず滝のような汗が止まりません。馬返しからゴールまでは5キロの距離なのですぐ着くと思っていましたが、登りの5キロは長いですね。なかなか終わりが見えてきません。何とか2時間10分以内にゴールできればいいと思って頑張って登りました。
それでも4合目を越えたあたりから少しずつ空が明るくなってきて、遠くの方から歓声が聞こえたりしてきます。あともうちょっと頑張ればゴールのようです。4合目過ぎから空腹感を感じて、お腹がグウグウなっていました。足もそろそろ限界で、登るスピードがちょっとずつ落ちてきました。でもSUNNTOの距離表示はもう15キロ超えているのでそろそろゴールに着くはず!と思って何も食べませんでしたが、ここからがまだ長かった。ヒイヒイ言いながら登っていると、車道に出ました。応援の人もたくさんいます。少し斜度が緩いのでみんな走っています。僕も走ろうとしましたが、体が走ることを強烈に拒否する感覚でほとんど走れず。幸いすぐトレイルに入ったのでそれほど遅れずに済みました。どうやらここが最後の登りのようです。そしてここら辺で時計が2時間10分を超えました。
エネルギーが切れて力が入りませんが、気力を振り絞って登ります。上の方に小屋らしきものが見えてきました。歓声も大きく聞こえます。トレイルから小屋の前に飛び出すと、すぐ右手がゴールゲートでした。唐突なゴールの出現、小さくガッツポーズしてゴールに飛び込みました。ああ、辛かった。これでやっと休める・・・。
ゴールタイムは2時間13分11秒でした。
来年山頂コースの出場権は何とかゲットできましたが、2時間10分切りのBブロック入りはかなわず、Cブロックからとなります。
しかしこの後山頂行け!と言われても正直行けないなあ。山頂コースはまだ無理ですねえ。
【ムービー】
レース中はとにかくきつくてほとんど撮影できませんでした。少しだけ撮った動画がありますが、揺れて気持ち悪くなる動画なので無理に見ないでください。一番最後にまとめたムービーがあります。
ゴール後
ゴールしてやっと休めると思ったら、結構歩かされます。ゴールから少し歩いたところに給水と給食があったので、バナナ4個くらい食べてスポドリもガブガブ飲みました。超空腹で一歩も動けないくらいでしたが、これで何とか回復しました。少し休んで、みんなの後について歩き出します。
先ほどまでの森林のトレイルと打って変わって、一気に景色が富士山っぽくなりました。山頂は雲で見えません。時折雨が降って来て、標高が高いので気温も低く、体が一気に冷えていきます。ウエアも水かぶったかのようにビショビショだし。早く着替えないと凍死する。
ゴールから1キロほど歩いた所で、ゴール後用に預けた20リットルの袋を受け取ります。着替えとタオルを入れておいたので、道のわきで身体を拭いて着替えました。パンツ(下着)は脱げなかったので、濡れたパンツの上に新しいズボンをはきました。全体的に湿気っぽいですが、フーディニも着て凍死は回避できました。
更に歩くこと数分、富士吉田登山口ターミナルに到着。ここまで歩いてくる間にも大勢の登山者がいましたが、このターミナルは新宿かってくらい人がたくさんで驚きました。そして半分くらい外国人でした。やっぱり富士山は混んでますねー。
まだ歩きます。ターミナルから800m先が我々レース参加者のバス乗り場です。一般の方の邪魔をしてはいけませんからね。しかしこのバス待ちの列がかなり長く続いて、バスに乗るのに1時間近く待たされました。ヘトヘトでゴール⇒2キロ以上歩く⇒バス乗車待機列1時間 のコンボは結構疲れましたね。
やっとバスに乗り込んでもすぐには帰れません。一旦メイン会場の富士吉田市民会館まで戻って来て、ここで荷物を受け取ります。シャトルバスは少し離れたところに止まるのでここでも歩かされるのが地味に辛い。
参加者には600円分のクーポン券が事前に配布されているので、出店で好きなものを買って食べることができます。が、この日は早々に吉田うどんが完売となり、食べ物はこの焼きそばくらいしかありませんでした。せっかくなので富士山ビールも飲みました。
食べながらしばらく周辺の人を眺めたりしていましたが、寂しくなってきたので帰ることにしました。会場から駐車場までまたシャトルバスに乗車し、やっと自分の車に戻って来ました。とにかく移動が面倒な大会ですねー。
タイムなど
ランネットの記録によると、2時間13分11秒で全体の576位という結果でした。1200人くらい出走しているとすると何とか半分より前にはゴールできたことになります。前半の馬返しまでが1時間10分、後半のトレイルが1時間3分くらいでした。
とにかく前半がきつくて歩いてしまった事もあり、相当下の方の順位じゃないかと思っていましたが、トレイルで少し挽回できたのか思いがけず高順位だったという印象です。
まとめ
憧れの富士登山競走でしたが、やはりタフなレースでした。とにかく参加者のレベルが高い。そしてみんな相当練習してきている感じがします。僕ももっと坂道ランを練習してから参加しなければいけなかったです。馬返しまで1時間5分以内にいければ、2時間10分でゴールも実現しそうです。
せっかくゲットした山頂コース出場の権利なので、早速来年山頂コースにエントリーする予定です。五合目コースでも死ぬほどキツかったのに、その後さらに1500m登るっていう冗談みたいなコースですが、時間内完走目指して1年間トレーニングのモチベーションにします。坂道ランをやろう。
【余談】
履き古したターサージールでトレイルなんて大丈夫だろうか、と心配でしたが、これが思いのほか快適でした。軽いしグリップいいし、プロテクションと防水が無しですが、やっぱりターサージールはいいシューズでした。来年もこれで出ます。