北アルプス・爺ヶ岳に登ってきました。先日の唐松岳に続いて今シーズン2度目の雪山登山です。
雪山登山の経験を積むため、残雪期の初級雪山に登ろうと計画した中、僕でも登れそうな山はいくつか候補がありましたが、自宅から下道で行けて駐車場も無料の爺ヶ岳をチョイスしました。お金がかからないということは今の僕には大変重要なのです。
当日の天気予報は快晴で気温もかなり上がるとの事だったし、2019年11月に登った時もちょっと雪あっても楽に登れた記憶しか無かったんで、今回も残雪期のバリエーションルートとはいえ優しい登山になると思っていました。
そう、この時期の爺ヶ岳は一般ルートが雪に埋まっているため、バリエーションルートの南尾根から登るんですね。そんなこと全く知らなかった僕でも、ヤマレコ見てわかったような気になっていました。
ルート・コースタイム
立山黒部アルペンルートの信州側玄関口である扇沢手前にある柏原新道から入り、途中登山道を右手に外れて南尾根に取り付き、あとはひたすら尾根筋をたどるルート。雪が溶ける6月下旬頃まではこのルートが爺ヶ岳登山道となります。
地図で見ると距離的には夏道より短いし、天気も良さそうだし余裕でしょ!と勇躍乗り込みましたが、思いがけずキツい登山になりました。
当日の様子
自宅を5時半に出発。途中コンビニでこれから登る爺ヶ岳を撮影。天気は快晴ですが、思ったより雪が付いているのが若干気がかりでした。この直前17日・18日と降雪があり、これまでの暖かさで一部露出していた東側の山肌にも雪がこんもりついています。
扇沢手前の柏原新道登山口の駐車場には7時前に到着。道路わきのスペースが1台分残っていてラッキーです。あまり入山していないのかな?
自宅から1時間ちょっとで来られる扇沢は道も良くてアクセスにストレスのない登山口で大好き。立山まで行こうとすると大金が必要ですが、爺ヶ岳や針ノ木岳は無料で登れるので嬉しい。冬タイヤは不要です。駐車場も無料。
装備を整えて登山開始です。まずは普通に柏原新道を登ります。
登り始めこそ雪がありませんでしたが、登山道に入るとすぐに雪。直前の降雪で標高1500m程度でも雪が積もっていました。
しばらく道なりに登山道を進みます。下りの時はこの雪が溶けて滑って大変でした。
標高が上がるにつれ雪が増えて歩きにくくなってきたので、アイゼン装着。
歩き始めて40分ほどで、登山道を外れて南尾根に取り付きました。ルート表示の看板は無しでしたが、先行者の足跡を追っかけていたら自然と取り付いていました。斜面にはまだ新しい雪とトレース。トレースは数人分であまり踏み固められていませんが、まだこの辺は歩きにくくも無かった。
南尾根に入った後はずっと尾根筋を歩きますが、尾根と言っても樹林帯です。藪はほとんど雪の下ですが、木々の間を縫って歩くのに結構手間取ります。足元は雪ですが、やわらかい新雪に近い雪で、標高2000m超えてくると踏み抜きも出てきて体力を奪われました。もう少し人が入ると上の写真の木の無い斜面にトレースができるらしいんですが、この日は無かったためずっと歩きにくい樹林帯を登っていきました。とても疲れた。そしてこの頃から西風が強くなってきました。
樹林帯の長い登りに耐え、ジャンクションピークに出ます。天気はいいんだけど西風が強くて寒くなってきました。
ジャンクションピークまで出ると、稜線からつながる爺ヶ岳の南峰と中峰が目に飛び込んできます。稜線に出ると風が一層強くなったので、シェルとニット帽を装備しました。ここで樹林は終わりだと思ってましたが、この後もトレースは樹林帯の中に延びていたので、後を追います。
この辺から雪がかなり深くなって、油断すると腰まで踏み抜くこともあるような道。トレースは3~4人分くらいだったと思います。トレースありがたかったけど非常に歩きにくくて体力を奪われました。
振り返ると、針ノ木岳と針ノ木雪渓が綺麗です。
踏み抜き多発地帯をヒイコラ言って抜けて、やっと南峰直下まで来ました。
強風吹きすさぶ稜線では、雪が少なく所々夏道が露出していました。まだアイゼンはつけたままです。
ガレとハイマツの登山道。この辺でアイゼン外しました。天気はいいのですが風がかなり強いです。とはいえこの辺ではまだ余裕がありました。さっさと登頂してビール飲もうとか考えてた。
さて、この斜面を登れば南峰頂上です。頂上直下まで来ると西風がいよいよ暴風って感じになってきました。吹き上げられた雪が顔にあたって痛い!この辺でとりあえず今回は南峰だけにしようと決めました。
お腹が空いていましたが、強風を避けて休む場所を探すのが面倒で強行しました。
うーん、風が強い。さっきより風強くなってない?ていうかやはり標高が高くなればなるほど風の勢いが増します。「ここまで来て、まさか登れないなんてことは無いよな?」と思いましたが、とりあえず風に負けじと登り続けます。
風は唸りを上げて吹きすさんでおり、その風力もそうですが音!音がとにかく怖い。「ゴゴゴゴ・ゴゴゴウ!ゴウゴウ!ババババババ!!」って感じで恐怖を感じる唸り声です。ザックのストラップが風にたなびいて顔にあたって痛い!
ちょっと1回泊って写真でも撮って落ち着こう。左手には剣・立山連峰が相変わらずのド迫力です。ちょっと霞んでますが、種池山荘のオレンジ屋根も含めて素晴らしい景色。なんだけど風が強すぎて落ち着いて鑑賞してられません。
振り返って針ノ木岳。針ノ木雪渓今年も登ろうかどうしようか。でもまだ雪多そうだなあ。山スキーで行こうかなあ。
なんてこと考えていましたが、立ち止まっている間にも風は弱くなるどころか増々強くなっている気がします。現在標高は2600mほど、あと80mほど登れば南峰頂上。恐らく10分も歩けば頂上につくはず。
しかし、すでに立っているのも困難な強風の上、頂上付近の雪が風に飛ばされる映像が強烈で、怖くなってしまいました。「このまま進んだら降りてこれなくなるかも」そう思ったら、もう進めませんでした。はい。撤退することにします。
撤退現場から少し下った所で撮影した動画です。
降りるとなればすぐに降りましょう。どんどん下ります。登っていく何組かのパーティとすれ違いましたが、皆さん登頂できたのだろうか?そして撤退した自分の判断は正しかったんだろうか?そんなことを考えながら、何度も振り返りながら降りました。
踏み抜き地帯を苦労して越えて、かなり下って来ました。尾根上の樹林の中で一休みしました。この辺までくれば寒くもなく、先ほどの強風が嘘のように静か。
その後も緩んだ滑りやすい雪と木の根のミックスで歩きづらい道を下りました。登頂できなかった悔しさからいつにも増して下山が長く感じました。
朝は気付きませんでしたが、ベンチがあったんですね。このベンチのすぐ先が尾根への取り付き地点でした。この辺まで降りてくると雪はかなり解けてシャバシャバなんですが、滑りやすくて難儀しました。アイゼン外して手に持って歩いていたら滑って手を切るというありがちなミスもしました。
ヘトヘトで登山口まで辿り着きました。そして下界は暑い。
扇沢方面の稜線。川を渡ったすぐに駐車場があります。今日は空いていました。
帰り道の大町から。爺ヶ岳と鹿島槍ヶ岳が綺麗でした。
服装・持ち物など
全開唐松岳に登った時は冬用のゴアテックス上下で行きましたが、今回は気温も高そうだったので上はカッパ、下は普通の登山ズボンで行きましたが、風に耐えられなかったのでやっぱり冬用シェルで行った方が確実でした。
15年ぶりくらいにスパッツも装着しました。残雪期には必須ですね。
アイゼンは12本爪でいいと思いますが、標高低い所で雪がとけているようなシーンではチェーンアイゼンのようなものの方がいいと思いました。持ってないけど。
まとめ
元々トレーニングが目的だし、登頂に拘っているつもりは全然無かったつもりだったんですが、登頂できなかったことが思いのほか残念に感じました。すがすがしさが無いというか、登れたんじゃないか?っていう後悔のような感情が強いです。
元々冬山の経験はほとんど無いので、正しい選択ができる知見が無いんですよね。こういう時だれかと一緒なら心強いんですが。でもあの強風は今までの経験では一番強烈だったし、しょうがないですかね。いい経験にはなりました。
この後もう1回くらい雪山経験しておきたいと思っていますが、後僕が登れそうな雪山は乗鞍岳、天狗岳、針ノ木岳、焼岳あたりでしょうか。5月中にテントで1泊予定しているので、その前に行ければいいんですが。まあ無理せずやります。