MSX3メモ ~マラソン・トレラン・登山のあれこれ~

アルコールを中和するために走るおっさんが登山やマラソンのことをメモするブログ。マンガゲームウイスキーについても語る!

乗鞍岳ツアーコースでの雪崩死亡事故について思う事

2021年3月14日、北アルプス乗鞍岳で雪崩が発生し、5名が巻き込まれ1名が死亡するという事故が起きてしまいました。お昼頃からヤフーニュースのヘッドラインに速報が出ていたし、その日の夜のテレビのニュース番組ではトップニュースで報じられていたので、見た方も多かったと思います。

www3.nhk.or.jp

news.yahoo.co.jp

乗鞍岳は僕も2016年4月2日に山スキーで登りました。

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乗鞍岳は僕の地元の山で麓からもよく見えるし、山スキーで何度も登ったので思い入れがあります。この雪崩遭難事故について思うところを書いてみます。

※状況がはっきりしない部分は憶測で書いてます。また僕個人の見解です。

3月の乗鞍岳

乗鞍岳は標高3026mの剣が峰を主峰とする山々の総称で、長野県と岐阜県の県境にあり、北アルプスでは一番南に位置します。時期的に3月は厳冬期ですが、冬型の気圧配置が緩む日も多くなるため雪は締まってきます。

その年によって積雪量が違いますが、今年は北アルプスのその他の山も雪が非常に少ないので、乗鞍もかなり雪が少なかったと予想します。ただ少ないと言えど3000m峰ですから、当然登山するには雪山装備が必須となります。

雪崩発生現場

mainichi.jp

ニュースによると、雪崩が発生した現場は標高2400m付近の位ヶ原付近ということですが、上記ニュース内の空撮から見るに、位ヶ原山荘の真南あたり、ツアーコースの森を抜けた直後の急斜面のようです。位ヶ原山荘分岐看板の手前あたりでしょうか。

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この辺ですかね?この急斜面を抜ければ広大な位ヶ原の雪原になるのですが、その直前に雪崩れるような斜面があったかな・・・?

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樹木の高さ的にもこの手前あたりだと思います。

ゲレンデトップが標高2000mですから歩き始めて1時間ほど、稜線の遥か手前でまだまだ登山序盤での雪崩遭遇だったと思われます。

乗鞍岳の冬山登山の危険度

冬山は天候次第でどこでも危険という前提で、晴れていればの話です。

乗鞍岳は「北アルプスの中では冬山初心者向けの山」という認識が普通だと思います。スキー場のリフトを利用して標高2000mのゲレンデトップまで楽に行けるし、ツアーコースは滑落のリスクがある急斜面やピッケルが必要な箇所も無く登りやすいです。僕自身も過去3回3月の乗鞍岳に入って、2回は強風と天候悪化で撤退していますが、命の危険を感じたことはありませんでした。

そもそも北アルプスの冬山登山で初心者でも日帰り可能なのは乗鞍岳と唐松岳(と白馬乗鞍岳)くらいです。他の山は登山口へのアクセスが制限されるし、技術的な難易度もかなり高くなってしまいます。だから乗鞍岳は人気だし、山スキーヤーにも定番のコースです。

(※積雪の状況や天候によって状況は一変しますので、簡単な山と言っている訳ではありません。ご注意ください。)

そんな訳で、3月でも晴れた週末なんかは多くの登山者やスキーヤーが入山しています。この日も多分そうだったんでしょう。

今回の雪崩の原因

前日の3/13は低気圧の影響で全国的に大荒れの天気で、麓の松本でも大雨が降ったりしていました。乗鞍岳では当然雪が降っており、30cmほどの積雪があったようです。この新雪が弱層となり、気温が上がって雪崩れたということのようです(登山者による弱層へのストレスも一因としてあると思います)。

ニュースによると、幅200m、長さ300mに渡って雪崩れたとのことなので、かなり規模が大きいですね。斜面全体が表層雪崩を起こしている感じです。

同日に中央アルプス千畳敷カールでも雪崩があったし、しばらく雪降らない⇒ドカ雪⇒晴天で雪崩が発生しやすい条件だったことは間違いなさそうです。

www3.nhk.or.jp

今回のニュースを受けて思った事

僕自身、3月末に乗鞍山スキーを計画していたので、とても驚きました。

そして、乗鞍岳で雪崩という事にも驚きました。稜線直下には急斜面もあるけど、乗鞍に雪崩のイメージは無かったです。白馬大雪渓とか涸沢カールとかなら不思議じゃないけど、乗鞍の2400m付近で雪崩る斜面なんてあったかなと。ニュースで「地元の人はここはよく雪崩れるから近寄らない」とかやってましたけど、普通にツアーコースになってるんですが…。

冬山とはいえ、乗鞍岳に過去にも登ったことがあれば、難しい雪山という印象は恐らくないと思います。天気さえよければ初心者でも日帰り登頂できる山というイメージです。そしてリフトで上がれるので、リフトが動いている間に行きたいと思うのが自然な流れです。スキー場の営業が例年3月末の週末までなので(今年は4月3日まで)3月中に行きたいと思う人は多いと思います。

今回は前日に大雪が降った後の快晴で、雪崩のリスクは間違い無くありました。雪崩注意報も出ていました。しかし、仮に僕がこの日に山行を計画していたら、雪崩を警戒して登らなかったかどうか自信がありません。この日しか休みが無ければ強行していたかもしれません。今回の犠牲者のように県外から遠征してきていればなおさら登ると思います。実際の所雪崩注意報なんてこの時期常に出ているし、気にもしていない人は多いと思います。「雪崩注意報が出ているのに山に入るなんて云々」言っている人がヤフコメに溢れていますが、そんなもん後からだから言えるんですよね。今回亡くなってしまった方は本当に気の毒ですが、ツイてなかった。

さらに「安易にゲレンデ外を滑る奴は遭難して当たり前」的なことを言う輩が多いですが、乗鞍岳にスキーで入るということは冬山登山装備の上入山しているので、よくあるスキー場のゲレンデ外を滑るパウダージャンキーの類とは全く別です。冬山登山をやっている人が、「雪山に登る道具としてスキーを選んでいる」というのが正しいです。

山でこういう事故があって遭難者が出ると、無責任な外部の人間があーだこーだ批判してきますが、確かに捜索する人はじめ色々な関係者に迷惑をかけてしまうことは間違い無いんですが、じゃあお前ら人に全く迷惑を掛けずにこれまで生きてきたのかよと問いたいですね。事情も知らずに勝手なことよく言えるなと思いますね。

亡くなった方には心からご冥福をお祈りします。年齢も僕と近いし、山スキーを趣味としている点にも親近感があります。他人ごとではありません。山に入るという事は、夏でも冬でもいつでも事故で死んでしまう可能性があるんだと再認識しました。僕も今回の事故を教訓として、安全登山を心がけたいと思います。

冬山は初心者向きとか言われていても絶対甘く見たらダメですね。まだまだこれから雪崩シーズンです。気を付けましょう。