裏銀座縦走路で水晶岳に登ってきました。
日本三大急登ブナ立尾根から烏帽子岳、野口五郎岳を縦走して水晶岳まで1日でたどるロングルート。生憎天候に恵まれず2日目はまたしても雨(3回連続)となり、超長距離の登山は辛いく苦しい体験でしたが、初めての裏銀座はなかなか貴重な体験でした。
アクセス
裏銀座縦走路のスタート地点は大町市の七倉登山口となります。僕は自家用車で行きましたが、公共交通機関の人はタクシーで来ることになります。その場合7000円ほどかかるらしいですが、登山口にある七倉山荘に宿泊すれば、1900円で大町駅から送迎してくれるようです。
で、その後がちょっと面倒です。七倉登山口から高瀬ダムまでは5キロあって、タクシーで入るのが一般的です。タクシー以外の自家用車は通行不可。自転車もダメです。このタクシーの運行状況がよくわからなかったのですが・・・
- 朝6時から3台ほどでタクシー運行している。
- 平日は人が少なく、相乗りは期待できない。ダムまで2400円。
- 運ちゃんが積極的に相乗りを世話してくれることは無さそう。
- 帰りも、高瀬ダムでタクシーが客待ちしている。
タクシー相乗りできれば600円程度で5キロ稼げるなら乗らない手はない!と思っていましたが、僕が行った日は相乗りできるような登山者が他におらず、どうしようか悩みつつも結局徒歩でスタートしました。
ルート・コース状況
今回は、大町市の七倉登山口を起点に反時計回りに周回するコースを計画。1日目に裏銀座縦走路を歩いて水晶岳まで行くのはなかなかハードな行程ですが、標準コースタイムの7掛けで歩けば行けると例によって欲張りな計画としました。水晶小屋に宿泊予定なのでテント装備に比べて荷物も軽いし、まあ大丈夫でしょう。
概ね予定通りに歩けました。各区間のざっくりとした感想は以下。
七倉~高瀬ダム
トンネルと舗装路で5キロ、猿時々ダンプ。ダム堤防の九十九折が難所。タクシー代ケチらなければ良かったと激しく後悔する道。
ブナ立尾根
日本三大急登と言われるだけに、結構な急登。確かに足を休める平坦路があまり無い。ただ標高差1200mなので3時間弱で終わるし、言うほどきつくなかった。ちなみに白峰三山縦走で登った大門沢ルートが自分史上では最高急登です。昨年登った黒戸尾根もたいしたことなかった記憶。
烏帽子小屋~烏帽子岳
稜線に着いてから目指す水晶岳と逆方向なのが嫌だが、空身で急げば往復1時間ほど。なかなか訪れる機会の無いエリアだけに、烏帽子様の岩峰は登っておきたい。
烏帽子小屋~野口五郎岳
裏銀座らしい風光明媚な素晴らしい縦走路。アップダウンも少ないし晴れてれば景色最高だし言うこと無し。でも全然人が歩いていない。
野口五郎岳~水晶小屋
東沢乗越を過ぎたあたりから登山道の様相が変わり、岩っぽくて険しくなる。難しいところはないが、水晶小屋が遥か上に見えて絶望する。
竹村新道
周回コースで湯俣温泉に行くには通るしかない。よくこんな所に道作ったな!って驚く急斜面、そして距離も非常に長い。登りだとブナ立尾根よりきついんじゃないか?一応整備されているが、ハイマツや灌木がかなり張り出しているので歩きにくい箇所あり。藪漕ぎって程ではないけどまあまあワイルドな道。雨だと木の根が大変滑りやすい。5~6回派手に転倒しました。今回の核心部分だった。
湯俣~高瀬ダム
よく整備されたフラットな林道歩き。何も考えずに歩けて楽だけど長い。
登山の様子
ここからは写真キャプション形式で登山の様子をご紹介します。
1日目 水晶小屋まで
登山口の七倉には6時頃到着。きれいなトイレあり。他に登山者の姿が無くタクシー相乗りはできなそうだったので、仕方なく徒歩でスタートする。
ゲートを通過してすぐに長いトンネルに入ります。この後も何度も暗いトンネルを一人で通過することになります。人生でこんなにトンネル歩いたこと無いよ。
ラスト1キロは高瀬ダム堤防までの九十九折の登り。ここで結構体力持ってかれた気がします。大人なら一人でもタクシー使いましょう。この後も長丁場ですよ。
やっとタクシー終点まで着いた。堤防道路にあるこのトンネルを抜ければ・・・
濁沢の吊橋。対岸に渡ります。
キャンプ場がありますが、利用禁止になっていました。コロナのせい?
水はBCAAを3リットル持ちました。後は山小屋で買う。必要な体力は持ったはず。
いよいよ裏銀座縦走路・ブナ立尾根に突入します。
登山口12番、烏帽子小屋0番で番号が振ってあるタイプの登山道。
天気予報は曇り後雨ですが、この時はまだ晴れてました。樹林の中は無風で暑い。
ブナ立尾根を淡々と登ります。確かに急登なので時間当たり高度は結構稼げて早いペースで登れます。
だんだんガスってきましたが、何とか天気はもっている。
烏帽子小屋9時50分着。2時間20分ほどでブナ立尾根を通過しました。まだ元気。
ちょっとだけ悩んだけど、せっかく来たし烏帽子岳を目指します。すげえ綺麗な稜線漫歩で、天気も良くて最高。ただちょっと時間を気にして焦りはありました。
遥か先に目指す水晶岳の双耳峰が見えていました。本当にあそこまでいけるのか?
烏帽子岳が見えた。とてもきれいなマッターホルン型の山頂。
近づくと巨大な岩の塊でド迫力。
山頂直下は鎖も使って登頂。本日一座目の山頂。
あ、剱岳だ!と思ったら、針ノ木岳でした。針ノ木方面に縦走するのも渋みがあって面白そうですね。
高瀬ダムも遥か下に見えました。よくこんな高さまで登ってきたなあ。
烏帽子小屋~烏帽子岳間の縦走路はハイマツと花崗岩のコントラストがとてもきれいでした。これぞ北アルプスって感じ。
これから向かう裏銀座縦走路。美しいが長い・・・。
烏帽子小屋。ここで水を補給しようかと思ったけど重くなるからやめました。宿泊は12000円で夕飯はカレー(レトルト)だそうです。水晶小屋で一緒だった人でこちらから来た人はほとんど前日烏帽子小屋泊でした。
小屋から少し先にテン場あり。テン場は砂地で近くに池もあって、とても居心地よさそうでした。
三ツ岳への登りがちょっとだけ堪える。紅葉は、少し色付いていました。
雷鳥発見。見事なカモフラージュです。
雷鳥とともにガスが湧いてきた…。
赤い草が綺麗。
三ツ岳は巻いていきます。
歩きやすいなだらかな縦走路ですが、所々に大きな石がゴロゴロしてます。
こういうやつ。中央アルプスの登山道みたいに歩きにくいことは無かった。
小屋まで300m。
野口五郎小屋着。すっかりガスの中です。小屋は営業終了していました。テント場もありません。野口五郎が野口五郎岳由来って知った時は結構な驚きでした。みんなそうですよね?
いい場所にあるし、テント場復活してくれないかなあ。
小屋から山頂が見える。
13時20分野口五郎岳登頂。広い山頂ですが誰もいなくて寂しい・・・。そしてそろそろ疲れが出てきました。
野口五郎岳周辺も箱庭のような美しい景観。ただちょっとガスが濃くなってきたか。もう少しだけ持ってくれ天気。
振り返ると立山と剱岳が見えた。
振り返って野口五郎岳の稜線。これは綺麗だった。
紅葉も少し。
東沢乗越には15時頃着。ここまで来れば小屋まであと30分という所のはずですが…。
ビバークポイントありました。
足が超絶疲れていますが、ここから先まだ結構アップダウンあった。
周辺の山が赤い岩に変わったころ、突然視界に飛び込んでくる巨大な山と、その山頂に水晶小屋が見えました。「あんなに高い所にあるのか…(絶望)」って感じ。
赤い山は「赤岳」で、その右奥に水晶岳があります。水晶岳は別名黒岳っていうんですが真っ黒くてすぐわかります。
ここまで時間を気にして早足で歩いて疲労困憊なんですが、小屋までの最後の登りを歯を食いしばって進むと・・・
水晶小屋に到着しました。午後4時前くらいでした。ここまで誰も抜かしてこなかったしガラガラかな?と思っていたら、この日の宿泊客30人くらいいて、混雑していました。三俣方面から来てる人が多かった印象。
チェックインして、荷物を置いたら山頂アタックします。この辺で雨がポツポツしだしましたが、明日は天気どうなるかわからないので行けるうちにと決行しました。
水晶岳に登頂しました!小屋からは30分くらい。
ここまで非常にハードな行程で疲れました。それでも一日で水晶岳に登頂できて嬉しい。喜びのポーズで写真撮影。
歩いてきた裏銀座縦走路を眺めます。長かったなあ。
水晶岳から北に延びるのは読売新道で、赤牛岳経由黒部ダムまで続きます。ここもいずれ歩きたい道。
水晶岳からは黒部源流と雲ノ平がよく見えました。雲ノ平と高天原温泉は来年行く。
小屋に戻って、体拭いて着替えて濡れたもの乾燥室で干して、落ち着いたら夕食。
今回ケチって素泊まりにしたので食材と酒は持参しました。水晶小屋平日2食付き12000円で、夕食カレーが2600円なんですよね。カレーに2600円って高くないですか?なら自炊するわ、ってことでカレーメシ食いました。これなら200円。セブンで買ったウインナー150円も入れて超豪勢でしたよ。他にも結構自炊している人いました。
外は雨風強くなってきましたが、小屋の中は暖かいし明るいし濡れたもの乾かせるし最高ですね。やっぱり小屋泊まりは素泊まりでも快適でした。布団も暖かくて最高でした。
2日目 竹村新道から湯俣経由下山
雨は夜中降り続き、風も強かった。朝になってもやむことはなく、当初予定していた鷲羽岳行きはキャンセルして下山することにします。5時50分頃カッパ装備して下山開始。快適な山小屋さようなら。
真砂分岐という所まで昨日歩いた道を戻ります。ガスの中何回も雷鳥に遭遇しました。
雷鳥だらけ。登り返しがキツイけど癒されるわ。
真砂分岐。ここから右手に進むと竹村新道入口です。
例によって誰も歩いていないんですが、道は結構ちゃんとしていました。ただ藪が結構張り出していて、歩きにくい。
基本的にはきちんと整備されています。これなら大丈夫そう・・・。
ハイマツが登山道に張り出していて、雨が伝って靴がびしょびしょになりました。
人っ子一人いないのでこんな看板でも安心する。今回の登山は全体的に人恋しかった。
標高高い所はハイマツと藪で苦戦。場所によって斜度もかなりありました。
方角的に硫黄尾根だと思います。
あの山はなんだろ、大天井岳かな?ガスでほとんど景観なく足元見ながら黙々と降る。
樹林に入ると、斜度が増す。すごい急斜面を下ります。木の根が超滑って何回も転びました。今回の登山で一番気を使った道。
3時間ほど下ると、川の音が大きくなって硫黄臭が漂ってきます。ガスの中に川が見えた。終わりは近いです。
雲を抜けたようです。峡谷が見えてきた。この辺も気の抜けない急斜面だった。
人口建造物が見えるとやっと安心した。川の色が綺麗です。
晴嵐荘に到着。竹村新道下山は3時間半ほどでした。長かった…。そしてここからも長いんだなこれが。まだ終わりじゃないよ。
ここから登ると水晶岳まで約8時間。そのくらいかかると思う。絶対登りたくない。
さて、まだ時間も早いし湯俣で温泉を見学していきます。まずはこの川を対岸に渡らなければいけないけれども、橋が途中で切れてるんですが…。
どうもこういう飛び石を渡らないといけないらしい。マジかよ。渡れそうな箇所をさがしてしばらくウロウロしました。
湯俣川を上流に向かって進みます。ちなみに最初のうちは道がありますが、途中からなくなります。この橋も結構怖かった。
河原から湯気がモクモク!秘境っぽい雰囲気に興奮します。
温泉がわき出していました。真っ黒いのは鉄?触ってみると超熱い!熱湯でした。なんか湯舟っぽくなっているけど、簡単に水を入れられなそうだったので入るのは断念しました。
場所によっては白っぽい温泉だったり。匂いは強烈に硫黄。
さらに上流に進むと、対岸にアレが見えてきました。
天然記念物の噴湯丘。これを見に来た。近づくには流れの速い湯俣川を渡渉する必要があります。とても無理なんで、望遠レンズで撮影しました。
温泉見物が済んだら、いよいよ最後の区間です。ここからはフラットな林道を15キロ歩いてスタート地点まで戻ります。
怖い避難小屋あり。
中はとてもきれいだったけど、絶対泊まりたくない。
高瀬ダムが見えてもまだまだ先は長いんだな。
最後に長い長いトンネルを通過して、やっと高瀬ダムまで戻ってきました。こんな雨の平日でもちゃんと帰りのタクシーが客待ちしていました。
悩んだけどやはり2400円節約して、最後の5キロも歩きました。ダンプと一緒に下るの怖かったけどいい気晴らしにはなった。結局七倉から完全徒歩で周回しました。総距離52.7キロ、お疲れ様でした。
行く前に心配だったこと
1.タクシーは相乗りできるか?
⇒平日はあまり人いないので単独乗車になる可能性高し。
2.1日で水晶小屋まで行けるか?
⇒コースタイムの70%で歩けば大丈夫だった。タクシー使えばさらに余裕あり。
3.竹村新道経由湯俣下山って大丈夫か?
⇒燕岳の登山道みたいに超整備された道では無いが、問題なく通行可能だった。水晶小屋まで1日でたどり着ける人なら、真砂分岐から下山3時間半程度。
4.湯俣からの林道の状況は?
⇒非常によく整備されていて上高地の遊歩道と同じくらい。
初めての裏銀座だったので色々心配事ありましたが、今回経験してよくわかりました。
今回の初めて
- 裏銀座
- 七倉登山口
- ブナ立尾根
- 水晶小屋
- 竹村新道
- 湯俣温泉
- 湯俣からの林道歩き
初めてのことが多く、いい経験を積めました。
かかった費用
- 山小屋(素泊まり) 8000円
- 水 200円
- おにぎりパンつまみなど 2000円くらい
- 帰りのマック 790円
- 計11000円ほど
小屋代が圧倒的に高いですが、今回は有料道路もバスもタクシーも使わなかったので最低限です。信州最高!
まとめ
というわけで、裏銀座初体験の記録でした。長かった。行程も記録も。
一泊二日で水晶岳はかなりハードな行程でした。2日間で53キロ歩いたのは過去最長。いっぱいいっぱいで、景色を見る余裕もほとんど無かったです。特に二日目は雨で景色が無い中ひたすら下山するだけ、湯俣で河原の温泉見たのだけが楽しかった記憶。もうこういうきつい訓練みたいな登山はやめたいと何度も思いました。
それでも、念願の裏銀座を初体験できたのは良かったと思います。何となく山慣れた玄人が行く山域、っていうイメージがあって地味だけど、すごくきれいな縦走路だし晴れてれば景色も超いいし、とてもおすすめ。
ただやはりアクセスが難だし、表銀座や穂高連峰に比べて圧倒的に登山者が少ないのも事実。ある程度経験を積んでから行くというのは正しいのかもしれません。長いしね。
今回タクシーの運行とか登山口の状況もわかったし、やっぱり自分で一回見ないと理解しないから行ってよかった。次は水晶から読売新道経由黒部ダムのルート行ってみたいですね。雲の平に抜けるのも楽しそう。
色々夢が広がる登山でした。お疲れ様でした!